目次
第56巻 第4号(通巻224号)
2010年3月
展 望
大英博物館「THE
POWER OF DOGU」展と東京国立博物館「国宝
土偶展」
中村耕作
スミソニアン博物館のオープンハウス
橋本裕子
コナベ古墳の限定公開
宇垣匡雅
奈良県香芝市における出土文化財廃棄事件について
考古学研究会常任委員会
地方分権改革推進委員会第3次勧告における博物館法見直し
平和・歴史教育委員会
考古学研究会第56回研究集会趣旨説明・報告要旨
統一テーマ「階層性と社会構造」をめぐって
光本 順
縄文時代における「階層性」と社会構造
山田康弘
弥生社会の組織と成層化—コミュニケーション・偶発性・ネットワーク—
溝口孝司
古墳時代における階層構造—その複雑性と等質性—
林 正憲
聖俗二重王権の構造—西ポリネシア・トンガの事例—
石村 智
考古学研究会第55回研究集会報告 コメントと全体討議
論 文
周辺地域における集団秩序と統合過程—弥生時代中期から古墳時代前期の千葉県市原市域を中心に—
大村 直
要旨
本稿では,千葉県市原市域の弥生時代中期後半から古墳時代中期前半の遺跡群の変遷過程から,前方後円墳体制周辺地域における集団秩序と地域統合過程を検討する。
前方後円墳は,情報の拡散とともに発生した広域連動的な地域統合の基点として周辺地域に波及する。しかし,その前段においては,成員権に対する系譜的基準を根幹としない開放的な集団原理が基層にあり,円錐クランのような成層社会,政治組織が準備されていたわけではない。また,地域統合は一方で新たな離散を生み出している。古墳時代前期における政治集合体は,あくまでも首長間の宗教的・観念的統合であり,とくに周辺地域では,排他的な領域支配,地域社会の再生産をも制御するような体制装置を認めることはできない。中央と地方を相対化し,双方向的な関係にもとづく検証が必要である。
キーワード
国家形成論,出自,キンドレッド,統合運動,千葉県市原市
日本列島初期の轡の技術と系譜
諫早直人
要旨 本稿では古墳時代中期に出現する初期馬具の中でも,轡について検討をおこなった。まず,製作技法に立脚してそれらを3段階に編年し,中国東北部や朝鮮半島の馬具編年との併行関係にもとづいて,各段階におおよその製作年代を付与した。さらには,初期轡の系譜についても若干の検討をおこない,それらの直接的な系譜が朝鮮半島南部のいくつかの地域に辿れることを明らかにした。このような初期轡の系譜の多様性は,馬やそれに伴う馬具が多様な経路から導入されたことを傍証し,日本列島において馬匹生産が軌道に乗る前の試行錯誤の過程を示している可能性が高い。すなわち,倭王権と特定の国・地域との一元的な関係にもとづいて,すべての初期馬具を合理的に説明することは困難である。
キーワード
日本列島,古墳時代中期,初期馬具,轡,製作技術
研究ノート
古代吉備における鉄生産の衰退
上栫 武
要旨 古代吉備における鉄生産の衰退状況について考古学的見地から考察を試みた。その結果,吉備における鉄生産の隆盛期は7〜8世紀代で,平安時代には特に南部地域が衰退期に入ること,そして鉄生産衰退の要因として生産の隆盛に伴い利用可能な鉄鉱石が枯渇した可能性を指摘した。平安時代以降,中国山地側が製鉄の中心地となるが,それは原料である砂鉄が豊富に存在したためと考える。なお,燃料である木炭も製鉄遺跡の動向と関わる可能性が考えられたが,木炭の供給源である木山は経年再生するため,木炭の減少は製鉄遺跡の移動の要因にはなり得るが,鉄生産の完全衰退とは必ずしも結びつかないことが考えられた。
キーワード
製鉄遺跡,付札木簡,鉄鉱石,砂鉄,木炭
書 評
ジナ・バーンズ
Gina Lee Barnes
著
『日本における国家形成—4世紀における支配エリートの出現』
佐々木憲一
新刊紹介
堤 隆著『ビジュアル版 旧石器時代ガイドブック』
考古学の新地平
考古学と文献史学(4)出土文字資料研究の成果
宮瀧交二
史跡公園は今・保存と活用への新たな動き
整備再開へ始動—史跡徳丹城跡整備活用基本構想の策定—
西野 修(岩手県矢巾町教育委員会)
日本の遺跡・世界の遺跡
山梨県北杜市 板橋遺跡
千葉 毅
北アメリカ フィグ島の環状貝塚群
伊藤慎二・瀬口眞司・Christopher
Gillam
会員つうしん