考古学研究会
<考古学研究会事務局>
〒700-0027
岡山県岡山市北区清心町16-37長井ビル201
TEL・FAX 086-255-7840
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会誌『考古学研究』
目次
第57巻 第4号(通巻228号)
2011年3月
展 望
史跡巨勢山古墳群の毀損について藤田和尊
発掘報告書の閲覧環境整備に向けて−遺跡資料リポジトリの活用−
北條芳隆
文化財返還問題・日韓共同シンポジウム参加記
森本和男
新木山古墳(三好陵墓参考地)の限定公開参加記
澤田秀実・中久保辰夫
座談会『発掘調査のてびき』をめぐって
考古学研究会第57回総会講演要旨・研究集会報告趣旨説明・報告要旨
私たちはどこにいるか−現代考古学の社会学的考察−岡村勝行
統一テーマ「〈日本考古学〉の時間と空間を再検討する」をめぐって
寺前直人
日本考古学と時代区分
内田好昭
古墳築造周縁域における境界形成−南限社会と国家形成−
橋本達也
「世界」史の中の弥生文化−環境・認知・文化伝達−
松木武彦 埋めこまれた「原日本」−繰り返されるミネルヴァ論争−
矢野健一
考古学研究会第56回総会「現代社会と考古学」講演
記念物指定制度の90年大久保徹也
論 文
弥生時代北部九州における両刃石斧の消費形態−今山系石斧を中心として−森 貴教
要旨
本稿では,弥生時代の北部九州における両刃石斧について,消費形態の観点から時空間的に検討した。両刃石斧全体のなかで今山系石斧を捉えたとき,弥生時代前期末から中期初頭を画期として各地域において今山系石斧が選択的に入手される状況への変化が認められた。また,今山系石斧をライフヒストリー(履歴)の観点から形態を分類し分布状況を検討したところ,原産地である今山周辺からの距離や各地域における石材環境,集落動態と連動する石斧の需要量などに応じた消費形態の差異の発現が認められた。これまでの研究では,今山系石斧の分布状況から直接的に背後の社会組織が議論されてきた。しかしながら,本稿の分析ではその分布範囲の内部において入手や消費形態に差異がみられることから,今山系石斧の流通は各地域・遺跡のコンテクストに即して理解されることを指摘した。
キーワード
弥生時代,北部九州,今山系石斧,消費形態,流通
考古資料にみられる分布境界領域の様相−横穴式石室を資料として−
太田宏明
要旨
本稿は,異なる横穴式石室類型が相互に形成する分布境界領域の様相を検討することによって,横穴式石室の伝播がどのような人間関係を媒体としたのか,あるいは石室類型の共有が過去の社会においてどのような意味をもったのか考察したものである。考察にあたっては,まず1章において横穴式石室に関して研究の蓄積がある地域を選び,先行研究を基に横穴式石室類型の分布境界領域の検討を行ったうえで,分布境界領域の様相の違いに基づいて類型の設定を行った。この結果,分布境界領域の類型として排他型,浸透型,混在型の3つの類型の提示を行った。2章では,分布境域領域の様相に加えて,境界を形成する横穴式石室類型の資料的特徴をあわせて検討し,各横穴式石室類型を広めた社会的要因について検討を行った。この結果,分布境界領域の相違を生み出した要因として,各横穴式石室類型伝播の媒体となった人間関係の相違をあげ,排他型は階層構造・中心周縁関係をもった恒常的な政治組織,浸透型は互恵的な交流・交易活動によって,それぞれ形成されたものであることを指摘した。また,混在型や排他型で横穴式石室類型の伝播が行われる場合には,石室形態が政治的あるいは集団的表象として機能する場合があることも指摘した。
キーワード
分布境界領域,横穴式石室,人間集団
百舌鳥古墳群における近代の史蹟指定−塚廻古墳・収塚古墳・長塚古墳の史蹟の仮指定−
尾谷雅比古
要旨
大阪府堺市に所在する百舌鳥古墳群を構成する塚廻古墳と収塚古墳,長塚古墳は,文化財保護法により史跡として指定され保存されている。これら3基の古墳は,所謂近代における文化財関係法令3法の一つである史蹟名勝天然紀念物保存法が1919年に制定された後,1920年5月に収塚古墳と塚廻古墳が大阪府内最初の史蹟に仮指定され,その2ヵ月後に長塚古墳が仮指定された。これらの仮指定は,府内最初の史蹟に対する指定行為というだけでなく,全国的にも後の本指定に先駆けて行われた仮指定という最初の行政処分であった。
史蹟名勝天然紀念物保存法の制定は,行政上,陵墓古墳以外に新たな史蹟指定古墳を生み出した。これは,国家の直接管理すなわち官有地への編入をともなわず,民間所有地のまま私権を制限し国家が管理できる古墳の出現であった。それは,宮内省による陵墓行政以外に,内務省所管の史蹟行政による古墳保存行政の始まりである。そこには,最高の国家祭祀を伴う祖先崇拝の対象としての墳墓を守るという陵墓行政を補完するための史蹟行政の位置づけも忘れてはならない。
史蹟名勝天然紀念物保存法の制定は,行政上,陵墓古墳以外に新たな史蹟指定古墳を生み出した。これは,国家の直接管理すなわち官有地への編入をともなわず,民間所有地のまま私権を制限し国家が管理できる古墳の出現であった。それは,宮内省による陵墓行政以外に,内務省所管の史蹟行政による古墳保存行政の始まりである。そこには,最高の国家祭祀を伴う祖先崇拝の対象としての墳墓を守るという陵墓行政を補完するための史蹟行政の位置づけも忘れてはならない。
キーワード
陵墓行政,史蹟行政,史蹟名勝天然紀念物保存法,仮指定,陪塚
書 評
条里制・古代都市研究会編『日本古代の郡衙遺跡』川尻秋夫
新刊紹介
亀島山地下工場を語りつぐ会編『水島のなりたちと亀島山地下工場』考古学の新地平
戦争遺跡を問い直す(4) 近代戦争遺跡の歴史性と現代性小田康徳
史跡公園は今・保存と活用への新たな動き
魅力あふれるフィールドミュージアムを目指して−鳥取県妻木晩田遺跡−岡野雅則
日本の遺跡・世界の遺跡
鹿児島県徳之島 トマチン遺跡新里貴之
中国・四川省 成都平原製鉄遺跡群
村上恭通
会員つうしん
委員会通信