考古学研究会
<考古学研究会事務局>
〒700-0027
岡山県岡山市北区清心町16-37長井ビル201
TEL・FAX 086-255-7840
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会誌『考古学研究』
目次
第58巻 第1号(通巻229号)
2011年6月
東日本大震災にかかる緊急声明
展 望
震災後の2ヶ月間に思いめぐらせたこと−考古学研究会第57回総会に参加して−高田貫太
考古学研究会第57回総会・震災フォーラム参加記
田中裕介
誉田御廟山古墳内堤立入り観察と世界遺産による保全構想
大久保徹也・澤田秀実・中久保辰夫
論 文
前方後円墳の設計原理試論新納 泉
要旨
岡山市造山古墳のデジタル測量の成果にもとづき、5世紀前半を中心とする時期の大規模前方後円墳の設計原理を推定した。造山古墳は三段築成で、後円部の高さが下から1:1:3の比率となり、その一単位の高さはおよそ6.25mである。その他の部分の設計にもこれが基本単位として用いられており、後円部の半径は16単位となる。6.25mは、甘粕健が推定したこの時期の尺度によれば、1尺が0.231mで6尺を1歩とすると4.5歩となる。誉田山古墳の基本単位は同様の尺度で5歩となり後円部の半径は18単位である。他の古墳でも類似の結果が認められ、段築の段の高さが設計の基本単位となっていることがわかった。
前方後円墳の設計は、設計図の機械的な拡大や縮小ではなく、構造的な強度などを考慮に入れた三次元的な設計原理にもとづくものである。また、各部位の長さも、必ずしも尺による切りの良い数値ではなく、歩を介在させた基本単位の倍数となることが推定された。この時期の大規模古墳の築造は、設計原理を次々と変化させながら、墳丘規模の拡大と前方部の発達という課題を実現させていったものと思われる。
前方後円墳の設計は、設計図の機械的な拡大や縮小ではなく、構造的な強度などを考慮に入れた三次元的な設計原理にもとづくものである。また、各部位の長さも、必ずしも尺による切りの良い数値ではなく、歩を介在させた基本単位の倍数となることが推定された。この時期の大規模古墳の築造は、設計原理を次々と変化させながら、墳丘規模の拡大と前方部の発達という課題を実現させていったものと思われる。
キーワード
前方後円墳、設計、尺度、造山古墳、デジタル測量
マヤ文明の環境利用例としての石器製作と戦争
−グアテマラ共和国ペテン地方南東部・中央西部の打製石器の通時的分析−
青山和夫・J.P.ラポルテ
要旨
本論では,マヤ文明の環境利用例として,グアテマラ共和国ペテン地方南東部・中央西部の65遺跡から出土したマヤ低地産チャート製打製石器の製作を中心に通時的に論じる。チャート製石槍及び農耕や日常の多様な作業に用いられた両面調整楕円形石器は,遅くとも先古典期後期(前400〜後250年)に製作され始めた。実用品ではない儀式石器としては,チャート製エクセントリック石器が王の儀礼に用いられた。古典期終末期(830〜1000年)には,投槍や投槍器といった「飛び道具」の製作が増加した。このことは,戦争に関連する碑文や図像と共に,ペテン地方南東部・中央西部の諸都市が衰退した要因の一つが,戦争の激化であった可能性を示唆する。
キーワード
チャート・黒曜石製打製石器,環境利用,戦争,マヤ文明,ペテン地方南東部・中央西部
研究ノート
黒土田遺跡の堅果類と縄文時代草創期土器群の年代に関する一考察工藤雄一郎
要旨
縄文時代草創期の生業活動を議論するうえで,東黒土田遺跡の貯蔵穴および出土したコナラ属炭化子葉は極めて重要な資料である。本研究ではこれらのコナラ属炭化子葉についてAMSによる14C年代測定を行い,これらが較正年代で約13,400
年前のものであり,南九州の隆帯文土器群の14C年代とも整合的であることを示した。東黒土田遺跡は西北九州や本州島の隆起線文土器群よりもやや新しい時期に位置づけられ,環境史的には晩氷期の温暖期の後半段階に相当する。晩氷期には南九州でもコナラ亜属主体の落葉広葉樹林が急速に拡大し,これらの資源が利用しやすい環境が広がったと推定される。縄文時代草創期の南九州における植物利用と,隆帯文土器との関係について,土器の内面付着炭化物の14C年代測定や同位体分析などを通じて今後より具体化していくことが必要である。
キーワード
14C年代測定,隆帯文土器,東黒土田遺跡,植物利用,縄文時代草創期
霞ヶ浦南西岸における地形発達が縄文時代遺跡分布の認識に及ぼす影響
亀井 翼
要旨
本稿では霞ヶ浦南西岸を対象に,地形発達によって我々が認識する縄文時代の遺跡分布が,本来の遺跡分布から歪められている可能性を検討した。遺跡立地の変遷を霞ヶ浦の海況の変化や低地の形成と考え合わせると,縄文時代前期前葉までの遺跡分布認識は,本来の遺跡分布を反映しているとは必ずしもいえないことを指摘した。後期以降には台地上で遺跡が減少し低地遺跡が増加するが,この立地傾向の変化は地形発達に伴う見かけ上のものではなく,実際の土地利用の変化を反映していると考えられる。前期中葉には陸地化していた湖岸段丘に,「製塩遺跡」をはじめとする後晩期の低地遺跡が良好に保存されていることも,本地域の特徴である。
キーワード
縄文時代,霞ヶ浦,遺跡立地,遺跡分布,地形発達
横穴式石室の型式は被葬者の活躍期を示す
岸本直文
要旨
五条野丸山古墳は300mを越える巨大前方後円墳で、全長30mにおよぶ横穴式石室を内蔵する。571年に没した欽明大王の檜隈坂合陵とみられるが、その石室の横穴式石室編年における位置づけをめぐって大きな見解の相違が生まれており、通説的な年代観に対して、全体を大きく引き上げるべきとの見方も表明されている。こうした横穴式石室の年代観の懸隔は、古墳時代の終焉から飛鳥時代への転換を考える上で大きな影響をおよぼす。実年代を与えうる考古資料が限られるなかで、蓋然性高く被葬者を想定しうる事例は、横穴式石室の年代観を考える重要な手がかりになり、生前造墓の考え方にもとづく試案を提示する。
キーワード
横穴式石室 五条野丸山古墳 石舞台古墳 牧野古墳 生前造墓
新刊紹介
杉山浩平著『東日本弥生社会の石器研究』國學院大學考古学研究室編
『土にうもれた歴史をさぐる!
考古学がよくわかる事典 発掘の方法から遺物の見方まで』
阿部芳郎編著
『考古学の挑戦 地中に問いかける歴史学』
小畑弘己・寺前直人・高橋照彦・田中史生
『ジュニア日本の歴史1 国のなりたち 旧石器時代から飛鳥時代』
ココが聞きたいッ 考古学の最前線
第1回 奈良文化財研究所 井上和人氏(聞き手 陶澤真梨子・奥原このみ・石村 智)
地域情報
静岡だより 第二東名高速道路の建設と埋蔵文化財富樫孝志
日本の遺跡・世界の遺跡
京都府精華町 鞍岡山3号墳の調査大坪州一郎
アフガニスタン メセ・アイナク遺跡群
ケタープ・ハーン・ファイズィー、岩井俊平
考古学研究会第57回総会・緊急フォーラム報告
2011年度全国委員会報告