考古学研究会
<考古学研究会事務局>
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岡山県岡山市北区清心町16-37長井ビル201
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会誌『考古学研究』
目次
第59巻 第3号(通巻235号)
2012年12月
展 望
特集 震災に向き合う考古学(5)被災地文化財の現状と課題東京電力福島第一原子力発電所事故における警戒区域と文化財
三瓶秀文
宮城県七ヶ浜町における被災文化財の現状と課題
田村正樹
釜石市の現状と課題
森 一欽
くらしとかかわる文化財のこれから—文化財保存全国協議会岡山大会参加記—
岸本道昭・纐纈文佳
根来寺遺跡を愛する人はいないのか
岸本直文
考古学研究会第58回総会研究集会報告(下)
日本考古学の方法論—アメリカ考古学との比較から—佐々木憲一
要旨 本稿では,人類学の一分野に位置づけられるアメリカ考古学との比較を通じて,日本考古学の方法論的特質を明らかにしたい。まず一般論として,日本考古学では帰納的研究法が顕著である。遺物・遺跡の記述を起点に,その解釈を進め,そういった解釈を統合し歴史理論に高める。その起点となる遺物の観察,遺跡の発掘は日本考古学の根幹を成しているため,それに傾注する時間と労力はアメリカ考古学と比較にならないほど大きい。詳しく遺物を観察するおかげで,また精緻な発掘を実践するおかげで,膨大な情報を考古資料から抽出でき,おかげで,演繹的研究法に大きく依存するアメリカ考古学より遠回りではあるが,説得力に富む理論を生み出しているといえる。
キーワード 演算的研究法,帰納的研究法,理論研究,方法論,アメリカ考古学
考古学研究会第58回総会研究集会報告 コメント・全体討論
論 文
縄文後期における多数合葬墓の埋葬過程—北海道カリンバ遺跡を中心に—青野友哉
要旨 本稿は,埋葬時の遺体周辺が充填環境か空隙環境かにより骨の移動に差が生じるとの考えを遺体への装着品に応用し,遺物の出土状況により埋葬環境を判別する方法について論じた。まずは,人骨の出土状況で判明している埋葬環境での遺物の出土状況を観察し,判断基準とした。次に,縄文後期の単葬の単独葬墓と合葬墓で判断基準を検証した後,遺物による判別方法を多数合葬墓へ適用し,埋葬過程の解明を試みた。
結果としては,最大7体埋葬とされる北海道カリンバ遺跡の多数合葬墓は,従来言われた「同時期死亡・同時期埋葬」や「再葬」ではなく,死亡順に追葬する「時差合葬」であることを指摘した。
結果としては,最大7体埋葬とされる北海道カリンバ遺跡の多数合葬墓は,従来言われた「同時期死亡・同時期埋葬」や「再葬」ではなく,死亡順に追葬する「時差合葬」であることを指摘した。
キーワード 縄文後期,カリンバ遺跡,多数合葬簿,埋葬環境,遺物出土状況
研究ノート
弥生時代の分銅森本 晋
要旨 大阪府亀井遺跡から出土した弥生時代の石製品が,天秤で使用した分銅であり,この時代に既に精密な重さの計量が行われていたことが明らかになった。時期が特定でき,しかも非常に古いうえに以下の特徴がある。分銅は,大半が円柱形ないし楕円柱形で形の斉一性が高く,2の累乗倍の重さという系列を持ち,完成品は全点が例外なくその系列に当てはまる。軽い物から重い物へ切れ目なく誤差がわずかな完全なセットが認められる。ほぼそろった2セットが土坑から密集して一括出土しており,しかも明確に区別できる砥石,石杵以外の石製品のすべてが分銅であり,たくさんの出土物から論旨に合う遺物のみを抽出したものではない。
キーワード 分銅,度量衡,基準セット,弥生時代,亀井遺跡
斜縁神獣鏡・斜縁四獣鏡の製作
實盛良彦
要旨 斜縁神獣鏡・斜縁四獣鏡の製作系統や系譜,そして製作時期と地域に関して考察した。斜縁四獣鏡の製作系統として吾作系と青盖系の二種を抽出し,いずれも「劉氏系」画像鏡と系譜上繋がりがあるが,青盖系には盤龍鏡の影響が考えられることを述べた。また斜縁神獣鏡には一部に画紋帯同向式神獣鏡の紋様表現を取り入れたものがあることを明らかにした。製作時期は,両鏡ともに3世紀前半には出現しているが後漢鏡には属さず,斜縁神獣鏡Ⅰ期の鏡と斜縁四獣鏡は西晋以前の鏡と思われることを示した。製作地域は山東半島から遼東・楽浪にかけての地域が想定でき,両鏡は公孫氏政権の影響下にあった地域およびその周辺で製作された鏡であると考えた。
キーワード 斜縁神獣鏡,斜縁四獣鏡,製作系統,三国時代,公孫氏
書 評
マイケル R.ウォ−ターズ 著(松田順一郎・高倉純・出穂雅実・別所秀高・中沢祐一 訳)『ジオアーケオロジー—地学にもとづく考古学—』
井上智博
田尻義了 著 『弥生時代の青銅器生産体制』
吉田 広
新刊紹介
宮城県考古学会『宮城考古学』第14号「特集 東日本大震災の記録(1)—文化財被害とレスキュー—」
ココが聞きたいッ!考古学の最前線
圧痕法による植物利用研究の最前線小畑弘己 (聞き手 徳富孔一・仲田周平・松本直子)
地域情報
大阪府だより—大阪府立弥生文化博物館「弥生時代入門講座」—濱田延充
日本の遺跡・世界の遺跡
高知県 小蓮古墳と朝倉古墳清家 章
カンボジア ポスト・アンコール期の遺跡群
佐藤由似