第1章 考古学と歴史像
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テーマ名 |
テーマ趣旨 |
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考古学による人間・人類の定義 |
考古学では人間または人類をどう捉えうるのか。考古学的な人間の定義と形質人類学によるそれとは異なるのか。人間という存在への根本的問いかけについて、その答えを探る。 |
2 |
日本列島にはいつから人が |
旧石器ねつ造事件以来、日本列島に人類がいつから住んでいるかという問題について、現在どう答えるかことが可能なのか。今後の研究の指針とあわせて論じる。 |
3 |
人類はなぜ、いつ定住したか |
定住化は人類史における極めて重要な生活様式の変化である。遊動的な生活に適応してきた人類は、なぜ、どのようなタイミングで定住するようになるのか。 |
4 |
土偶の意味と機能 |
土偶の意味や機能について、これまでの解釈は妥当なのか。土偶研究の理論・方法や縄文社会観との関係について展望する。 |
5 |
縄文時代の終わりはいつか |
縄文文化の地域性と持続性を踏まえ、縄文時代の終わり、そして弥生時代のはじまりをどのように設定・定義しうるのかについて議論する。 |
6 |
弥生時代の生業の実態とは |
弥生時代の米への依存度、生業の地域差、そして生業のあり方が社会変化とどのように関係したのかといった論点に対し、考古学的手法を用いて迫る。 |
7 |
木製品は何を語るか |
1990年代以降活発化した木器研究は、それまでに知り得なかった有機質の物質文化解明に大きく寄与した。日本考古学における木器研究の到達点と課題を論じる。 |
8 |
青銅器の有する意味とは |
弥生時代・古墳時代社会において、銅鏡、銅鐸、銅剣、銅矛といった青銅器が有した意味について、その出現・普及・衰退過程をふまえつつ、研究の到達点と課題を論じる。 |
9 |
鉄器の出現は社会を |
鉄器の出現・波及過程をめぐる最新の研究動向を踏まえ、鉄器がもたらした社会変化について実証的観点から議論を展開する。 |
10 |
古墳時代の政権構造とは |
「王権」「政権」「政体」「朝廷」「畿内政権」「大和政権」「ヤマト王権」などなどと言われる当時の中枢権力について,考古資料をもとにその実態を解明する。 |
11 |
古墳時代首長の支配領域 |
古墳研究で言及される被葬者(首長)の領域や支配地域。しかしこれらはほとんど具体的な姿を指摘しえない一面もある。その始原と変遷を歴史的にどう描けるのかを問い直す。 |
12 |
国家の起源 |
日本列島における国家のはじまりはいつか。またそもそも考古学において国家を語ることの重要性とは何か。国家をめぐる考古学的課題について議論を深める。 |
13 |
日本古代の家族とは |
日本古代の家族像はどのように描きうるのか。近現代的な家族観に捉われず、当時の家族のあり方にいかに迫るか。研究の到達点とこれからの課題について議論する。 |
14 |
都市とは何か、それはいつ |
都市とは何か、どのようにして形成されるのか。研究者によって異なる都市の定義やその人類史上の位置づけについて掘り下げて検討する。 |
15 |
瓦があらわすものとは |
瓦によって古代氏族の動向はどこまで判明するのか。最新の調査研究事例にもとづけば、瓦当文様の共通性や差異はどのように評価できるのだろうか。 |
16 |
交通の発達と社会変化 |
律令国家の地方支配に大きな役割を果たした古代道路、中近世土器・陶磁器にあらわれる交通網を基礎とする広域流通など、考古資料を用いて交通の発達に迫る。 |
17 |
都と地方の実像 |
古代・中世における地方都市と”都”。この時代の中央と地方の諸関係について、考古学から従来の文献史学がもつ通説にどのようにアプローチできるのか。 |
18 |
中近世城郭からよみとる |
調査事例の増加によって、中近世城郭研究は著しく進歩した。城郭の発展過程からみえる政治構造の変化や支配方式について分析する。 |
19 |
近世・近代陶磁器生産の展開 |
近世・近代陶磁器の生産は中世からどうようなベクトルで変質し、どのように近代へと展開していくのか。近年の研究蓄積をふまえて議論を深める。 |
20 |
日本文化とは何か |
照葉樹林文化論をはじめとするこれまでの日本文化論をどのように評価すべきか。史的唯物論の立場からの日本文化論批判への評価も含めて議論する。 |
第2章 考古学の理論と方法
テーマ |
テーマ名 |
テーマ趣旨 |
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型式学は有効か |
セリエーションや統計的処理などをはじめ、伝統的な型式学に対する批判は少なくない。実際の研究における成果を中心に、型式学やそれを批判する手法の限界と展望について論じる。 |
22 |
考古資料から民族は |
考古学によって過去の民族は復元しうるのか。考古学的文化と民族との関係に関する理論的・方法論的課題について論じる。 |
23 |
時代と時代区分 |
考古学において「時代」とはどのような意味をもつ概念なのか。考古学的な時代区分や、「古代」「中世」「近世」といった世界史的時代区分をめぐる諸問題を含めて議論する。 |
24 |
マルクス主義考古学は |
マルクス主義理論は戦後の日本考古学のひとつの基盤であったが、これからの日本考古学において、マルクス、エンゲルスをどのように活かしうるのか。その展望を探る。 |
25 |
首長制とは何か |
新進化主義による首長制概念は日本列島の歴史に有効か。「首長同盟」「首長連合」といった用語の問題も含め、列島の首長制を再吟味する。 |
26 |
集落と集団の関係を |
考古学で集団と集落の関係はどう捉えられてきたか。文献史学における氏族や村落とはどのように関係するのか。研究者の立場による概念の使用形態の相違を問い直したい。 |
27 |
交易をどうとらえるか |
交易は、経済システム、社会的ネットワーク、威信財の確保などと関わる、人類にとって重要な行為のひとつである。考古学における交易研究の課題や方向性について論じる。 |
28 |
移住と社会変動の関係 |
個人や集団の移住は、どのような要因で生じ、どのような結果を生むのか。移住を推定する方法論的根拠の問題も含め、人口動態や社会変動という視点から議論する。 |
29 |
気候変動と社会変化 |
気候変動は人間社会に大きな影響を与えてきたことは確実であるが、その実態はどこまで明らかなのか。どのような視点からの研究が必要かについて論じる。 |
30 |
考古学からみた景観とは |
景観考古学は、古環境復元、地理情報システム、景観認知などの視点や方法を含む学際的分野である。具体的なデータをもとに、その可能性と問題点について論じる。 |
31 |
考古学におけるGISの |
地理情報システムは、遺跡の立地条件や分布状況の分析など、さまざまな研究を可能にする潜在力をもつ。今後どのような方面での発展が期待できるか、展望や課題を論じる。 |
32 |
考古学で心は語れるか |
考古学で心を論じることは、難しいとされつつもさまざまに言及されてきた。より科学的アプローチを目指す認知考古学の方向性と成果について、肯定的・批判的両立場から論じる。 |
33 |
ジェンダーで何がわかるか |
ジェンダーという視点によって考古学で何が明らかとなったのか。日本考古学におけるジェンダー研究の現状を踏まえ、今後の展望を考える。 |
34 |
社会的差別の問題に |
被差別民といった社会的マイノリティ集団の出現など、社会的差別や格差の歴史に考古学はいかに迫れるか。現代社会に対してメッセージを発する可能性を探る。 |
35 |
多様な世代に対する |
子どもや年長者など、多様な世代の生活や役割は、考古学においてどのように研究されてきたか。過去の社会に対する認識を深める上での重要性や発展の可能性について論じる。 |
36 |
暴力をどう語るか |
人間にとって暴力とはどういうものか。人類史の中でどのように発現し、社会の複雑化とどう関わっているか。戦争というテーマを含みつつ、考古学を通して見えてくる暴力について考える。 |
37 |
考古学は科学か哲学か |
あなたにとって考古学は科学か、哲学か、あるいは両方だろうか。日本考古学における科学的潮流と人文主義的潮流について、双方の意義と対話の可能性を問う。 |
38 |
未来を切り開く学際的 |
本来的に学際的な学問である考古学は、自然科学や社会学、心理学など、さまざまな隣接諸分野とどのように連携し、新たな地平が開けるか。現在の課題を踏まえて展望を論じる。 |
39 |
測量機材の進化は発掘に |
発掘調査で使用する測量機材は、平板測量からトータルステーションなどへと大きく変化してきた。この変化は発掘調査をどのように変えつつあるのか。利点や課題、今後の展望を考える。 |
40 |
考古学にとっての |
デジタル化の大きな波の中で銀塩写真は消えつつある。これまで蓄積された写真資料や映像の意味と活用、デジタルデータの保存など、現在の課題や発展の可能性を論じる。 |
第3章 考古学と現代社会
テーマ |
テーマ名 |
テーマ趣旨 |
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なぜ考古学を学ぶのか |
考古学を研究することによって何が得られ、一般社会に何を還元し貢献してきたのか。今後のあり方に関する展望も含めて議論する。 |
42 |
なぜ発掘をするのか |
そもそも発掘の目的は何なのか。学術発掘・行政発掘にかかわらず、発掘の目的を論理的に考え、その目的にそった社会発信のあり方について論じる。 |
43 |
文化財はどう守られてきたか |
近代考古学以前に出土した文化財がどう守り伝えられ、現代いかなる役割を果たしているのか、そしてこれからどのように守っていくのか。 |
44 |
文化財をいかに未来へ伝えるか |
文化財を未来にどのように伝えていくのか、今後さらに何をすべきなのか論じ、生活の営みのなかで、文化財を伝えていく必要性を考える。 |
45 |
これからの埋蔵文化財調査 |
転換期にある埋蔵文化財調査の課題として、調査組織の再編、資格制度、報告書のあり方などを考え、長期的な埋蔵文化財調査体制を展望する。 |
46 |
旧石器遺跡捏造事件を |
2000年に発覚した旧石器遺跡捏造事件から、我々は何を学び、何を未来に伝えていかなければならないのかについて、あらためて問う。 |
47 |
学会誌はどうあるべきか |
学会組織として、学術成果を主体的に発信し共有していく学会誌はどうあるべきか、その中で『考古学研究』はどうあるべきかを問う。 |
48 |
考古学研究者の性差 |
考古学の女性研究者の数は欧米などと比較して依然として少ない。それがどのような問題を生起しているのか、そして今後どうあるべきか。 |
49 |
教育現場での考古学 |
考古学研究者と教育現場のすれちがいはないだろうか。歴史の文脈の中でのみ考古学を教えることでよいのか。考古学と教育の問題について広く論じる。 |
50 |
考古博物館の未来 |
行政における博物館維持に関する議論、利用者である市民の考古博物館に対する視線、これらがどういったものか踏まえ、博物館の存在意義をあらためて考える。 |
51 |
博物館学芸員の役割 |
学芸員資格課程の改定に伴い、学芸員には高い技能と社会性が求められている。現代社会において学芸員が果たすべき役割、そしてその養成のあり方を論じる。 |
52 |
平和に対する考古学の役割 |
考古学が明らかにしてきた争いの歴史を踏まえ、なお争いの絶えない現代社会に対し、考古学はどのような発信ができるのか、なすべきなのか問う。 |
53 |
考古学と災害史 |
考古学が明らかとしてきた災害の痕跡とはどういったものがあるのか。そして、その調査成果を現代社会へいかに発信してくべきか。 |
54 |
原子力災害とどう対峙するか |
現在直面している原子力災害の実態を見据え、これまでの原爆ドームなどの「遺跡」を含め、考古学の原子力災害への対峙のあり方を論じる。 |
55 |
「陵墓」問題とは何か |
「陵墓」とは、考古学にとって現在どのように位置づけうる問題なのか。これまでの動向も検証しつつ、「陵墓」をめぐる現代的論点と今後の展望について考える。 |
56 |
考古学とマスメディア |
考古学とその成果を一般社会に普及していく上で、マスメディアの役割は大きい。これまでの考古学とマスメディアの関係をかえりみて、これからのあり方を論じる。 |
57 |
日本の考古学に何を求めるか |
海外の研究者は、グローバルな考古学研究において、日本の考古学、日本人による考古学に何を求めているのか、海外研究者の視点から論じる。 |
58 |
学術成果の海外発信は |
日本考古学に関する日本語以外の本格的な学術媒体は依然として存在しない。学術成果の積極的海外発信には、どのような方法が適切であるのか。 |
59 |
国際的な研究交流は |
国家間あるいは経済面で格差の著しい現代社会の中で、国際化という視点において、考古学研究の交流はいかになされるべきか。 |
60 |
海外の調査・保存と |
開発や観光振興などを契機とする途上国における遺跡調査・保存に対し、日本の考古学はいかに関わっていくべきか、様々な視点から論じる。 |
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