<考古学研究会事務局>
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会誌『考古学研究』
目次
第62巻 第1号(通巻245号)
2015年6月
展望
- イスラームは文化財を破壊するのか?―誤解と破壊の拡大を防ぐために―
- 野口 淳
- 4年を経た被災地宮城から
- 藤沢 敦
- 第3回国連防災世界会議の枠組みにおける国際専門家会合「文化遺産と災害に強い地域社会」参加記
- 寺前直人・菊地芳朗
- 第2回アジア太平洋地域水中文化遺産会議その後
- 岩淵聡文・中西裕見子
- 能褒野古墳群および淡輪ニサンザイ古墳(宇度墓)の限定公開参加記
- 中久保辰夫・河内一浩
論文
- 「木組遺構」再考―縄文時代にアク抜き施設は存在するのか―
- 栗島義明
要旨 縄文時代の低地遺跡で最も普遍的に検出される遺構が木組遺構である。板材や丸太で構成された遺構は,しばしば井桁状の構成を持ち,その周辺からはトチやクリ,クルミなど堅果類が出土することから,民俗例に見るトチ棚との関連性を指摘したうえで「アク抜き施設」との理解が一般的となっている。本論では縄文時代の木組遺構の形態・構造を検討し,その結果を踏まえて民俗事例に見るトチ棚との比較研究をおこない,改めて縄文時代の木組遺構の性格・機能を考える。
木組遺構とされるものは基本的にⅥ類型に分類され,いずれもが台地下の湧水や滞水層を掘り下げた遺構で,湧水を溜める貯水空間と水利用に係わる木敷・石敷空間との連結構造が基本形である。湧水部の地形や水量・土質等によって貯水空間の構成・補強に精粗差が生じ,そうした要因に加えて継続的利用にともなう遺構更新も木組遺構の多様性を生み出す背景に在ると考えている。
トチの粉食に係わるコザワシでは,粥状にしたトチのアク抜き施設としてトチ棚が使用されている。机状の脚部を持つ棚状施設とのイメージの強いトチ棚だか,実はその多くは極めて簡易的であり,木組遺構との類似性は極めて乏しい。これまで多くの研究者は漠然と脚部:木杭,棚:枠(井桁状施設)との類推し,湧水からの水を使ってトチのアク抜きをした施設として木組遺構を評価していたが,全く根拠のない仮設である。木組遺構とは湧水箇所に設けられた水利用の施設と評価されるべきで,アク抜き施設に特化・特定されるものではない。
キーワード 木組遺構,アク抜き施設,コザワシ,トチ棚
- 考古学的視点から見た肥前西部地域の流通構造
- 柴田 亮
要旨 11世紀後半から13世紀初頭にかけての大村湾沿岸地域は,貿易陶磁の出土量の多さから,日宋貿易に係る交易のルート上に位置していると考えられてきた。湾内においては,白井川遺跡が交易の拠点的役割を担っていたと想定されていたが,その性格が判然としていなかった。出土遺物から分析を行うと,白井川遺跡は湾内一帯の流通拠点であると想定された。また,滑石製石鍋の出土状況を検討すると,大村湾内に流通した貿易陶磁は,琉球列島と博多の交易上でやり取りされた商品であった可能性が指摘された。
キーワード 肥前西部地域,流通構造,貿易陶磁,滑石製石鍋,南島
研究ノート
- 沖縄諸島におけるくびれ平底土器群の再検討―
- 與嶺友紀也
要旨 グスク時代初頭,沖縄諸島において,くびれ平底土器群からグスク土器へと土器文化が転換する。この土器文化の転換はグスク時代の生活様式成立に関わる重要な現象だが,その転換過程について未だ不明な部分が多い。そこで本稿では,グスク時代初頭の土器文化の転換解明のための基礎作業として,くびれ平底土器群の編年の整理を行った。まず,くびれ平底土器群を1つの様式として捉え,その様式を「くびれ平底土器様式」と呼称した。そして,くびれ平底土器様式を施文方法と底部形態の変化を基準として,3段階に細分し,グスク土器成立直前までのくびれ平底土器様式の変遷を明らかにした。
キーワード 沖縄諸島,貝塚時代後2期,グスク時代,くびれ平底土器群,グスク土器
書評
- 角田徳幸著『たたら吹製鉄の成立と展開』
- 上栫 武
- 俵 寛司著『脱植民地主義のベトナム考古学―「ベトナムモデル」「中国モデル」を超えて―』
- 吉田泰幸
新刊紹介
考古学研究会創立のころ
- 河本清さんに月の輪古墳発掘の頃を聞く/「月の輪」から考古学研究会へ
聞き手:山本悦世・岩﨑志保
考古学研究会との出合い
考古学研究会創立60周年記念企画「会誌でみる考古学研究会の60年」(1)
考古フォーカス
- 高知県四万十町 高岡神社の祭礼と銅矛
- 吉田 広
- シリア ルメイラ村の前期青銅器時代から鉄器時代―テル・アリ・アル=ハッジ調査報告書の刊行―
- 石田恵子・木下尚子
考古学研究会第61回総会・研究集会報告
会員つうしん