目次
第68巻 第2号(通巻270号)
2021年9月
展望
- 東京都港区高輪築堤の保存問題をめぐって
- 橋口定志・梶木理央
- 鉱山遺跡の調査研究を推進し保存活用を
- 萩原三雄・小松美鈴・青木美香・向井公紀
- 【連載】東日本大震災から10年 私たちは変わったのか⑵
- 震災から10年―宮城県の復興調査といま―
- 高橋栄一
- 東日本大震災後の10年の経過から(仙台市)
- 長島栄一
- 南三陸町の文化財行政―東日本大震災から10年,見えてきた課題と今後への期待―
- 大内望咲・生田和宏
- 未来へ活かせる内省
- 伊丹 徹
- 岩手県の復興調査が問われたこと―当時を振り返って―
- 菅 常久
- 陸前高田市における経験から―これからに備える―
- 曳地隆元
- 釜石における復興関連調査と遺跡の保存
- 加藤幹樹
- 復興支援を振り返って
- 横田 明
考古学研究会第67回総会・研究集会報告(上)
- 古代道路の象徴性
- 近江俊秀
要旨 古代,中央集権体制の実行のためには,中央と地方との間の情報伝達システムを安定して機能させることが必要不可欠であった。その役割を担ったのが七道駅路であり,7世紀後半頃に整備され,中央集権体制が変質する10世紀に,郡家などの施設とともに廃絶する。また,駅路には通行のために必要な機能以外の様々な要素が認められ,それは沿線に置かれた国府や郡家,国分寺などと一体のものとして国家権力を可視化するという意味も有していた。一方,国境や郡界などの境界の設定や条里制などのインフラとも密接に関わるなど地域にとっても有益な施設でもあった。
キーワード 中央集権,駅路,象徴性,律令制
論文
- 北海道島北部におけるオホーツク文化の石器利用―礼文町香深井1遺跡出土石器の使用痕分析―
- 高瀬克範
要旨 本研究の目的は,オホーツク文化における石器利用法の解明にある。礼文町香深井1遺跡出土資料(計725点)を対象として石器使用痕分析(高倍率法)を実施した結果,石鏃,尖頭器,石錐,石匙,石刃にポリッシュ・線状痕は認められなかったが,掻器は皮なめしに,削器は木,草本,骨,皮を対象として切断(または鋸引き),削り(または掻取き)など多様な用途に利用されており,石斧には伐採用の縦斧と木工用の横斧があることが明らかになった。ポリッシュの検出率や発達程度の低さは石器が主要な生産用具ではなかったことを示唆するが,それでも魚骨層Ⅳの段階までは相対的に石器が重要な役割を果たしていたことを剥片類の利用状況などから確認した。
キーワード オホーツク文化,剥片石器,石斧,石器使用痕分析
- 『日本書紀』紀年の再検討―応神紀・雄略紀を中心に―
- 新納 泉
要旨 『日本書紀』の紀年には,つじつまの合わない点が多く,これまで信頼性は低いとされてきた。本稿では,そうした不合理が生じた経緯を,『書紀』の編纂過程を復元することで再検討しようと試みた。まず,これまで年代の定点と考えられてきた『宋書』や『三国史記』などの海外史料に依拠した記事を脇に置き,『書紀』のもととなった倭系の原史料によると思われる記事から対外関係の展開過程を抽出し,それを海外史料と直接比較した。その対応関係から,応神紀は実際より115年さかのぼり,雄略紀は10年さかのぼって位置づけられていることがわかった。また,これまで重視されてきた海外史料に依拠した記事は,その干支に従って書紀紀年に機械的にあてはめられたもので,実際とは干支上,応神紀で5年,雄略紀で10年分のずれがあることになる。その結果,『日本書紀』に記された応神の在位は385年から425年,雄略は466年から489年となり,倭の五王のひとりである讃は応神に該当することが推定された。また,高句麗広開土王碑の倭にかかわる記事も,『日本書紀』のなかに対応関係を見出すことができた。
キーワード 日本書紀,倭の五王,応神紀,雄略紀,広開土王碑
研究ノート
- 墓壙内破砕土器供献の終焉
- 肥後弘幸
要旨 弥生時代後期の近畿北部は集落から離れた丘陵上に墳丘区画の明瞭でない台状墓を築き,大小多数の埋葬施設を営み,墓壙内に破砕土器を供献し,しばしば武器・工具類と装身具を副葬するという墓制を展開する。また,共通する土器様式を持ち,この地域に一定の文化的・政治的まとまりがあったことが明らかである。本稿では,独特の土器供献儀礼の変化を丹後,丹波,但馬の地域ごとに追いかけてどのように古墳時代が始まるのかを見てみたい。
キーワード 弥生時代後期,近畿北部,台状墓,墓壙内破砕土器供献,階層化
書評
- 根岸 洋 著『東北地方北部における縄文/弥生移行期論』
- 佐藤祐輔
新刊紹介
- 白石浩之 著『旧石器時代から縄文時代への転換―土器が出現する頃の文化変動―』
- 栗島義明
- 「陵墓限定公開」40周年記念シンポジウム実行委員会 編『文化財としての「陵墓」と世界遺産―「陵墓限定公開」40周年記念シンポジウム―』
- 東影 悠
考古フォーカス
- 岡山県岡山市 史跡造山古墳の調査
- 岡山市教育委員会
- パキスタン・イスラム共和国 メヘルガル遺跡の古人骨群
- アンドレア・クチーナ(鈴木真太郎 訳)
考古学研究会第67回総会・研究集会報告
全国委員会議事抄録
会員つうしん