考古学研究会
<考古学研究会事務局>
〒700-0027
岡山県岡山市北区清心町16-37長井ビル201
TEL・FAX 086-255-7840
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会誌『考古学研究』
目次
第69巻 第2号(通巻274号)
2022年9月
会告
展望
- ウクライナの文化財保護について―ロシア侵略戦争下の考古学関係資料を中心に―
- 雪嶋宏一
- 「危機」と考古学―WAC-9プラハ大会から―
- 岡村勝行
- 【連載】現代社会と考古学②
- 疫病と考古学
- 神野 恵
考古学研究会第68回総会・研究集会講演
- 鏡の伝世と集団
- 森下章司
要旨 古墳出土鏡には長期保有・伝世例を多く認める。それは鏡の保有が集団と個人の双方への帰属性を有していたことによるもので,集団の祭祀・保管の場で伝えられたものと推定する。こうした伝世現象を器物の保有形態や集団の動向など考古学の解釈に活用する方法と課題について整理する。中央・地方など各集団による鏡の授受・保有形態の状況を明らかにし,他の副葬品と比較して,長期保有・伝世傾向が弥生時代後期から長く続いた,鏡に特徴的な現象であることを再確認する。副葬器物の扱われ方に,鏡のように「継承される器物」と,授受や種類が「更新される器物」という二つの性格を見出し,両者が古墳時代の集団継承,政治的関係の維持に果たした役割を論ずる。キーワード 伝世,鏡,集団的保有,器物の性格
考古学研究会第68回総会・研究集会報告(上)
- 弥生・古墳時代の玉類にみる長期保有
- 谷澤亜里
要旨 本論文は,玉類を素材に弥生・古墳時代における器物の長期保有の実態を検討したものである。まず,前期古墳から出土する弥生時代的なガラス製管玉・勾玉を検討し,これらが弥生時代後期から地域社会で保有されていた可能性が高く,かつ,保有期間に厳格な管理がなされていたとは考え難いことを指摘した。続いて,中期古墳から出土する古墳時代前期的な翡翠製勾玉を取り上げ,前期に製作された翡翠製勾玉のストックが王権に存在しており,中期においても新しい玉とともに威信財システムのなかで運用されていることを指摘した。古墳時代中期においては,古い器物や伝統的な要素が王権の正当性のアピールに用いられたものと理解できる。キーワード 玉類,弥生時代,古墳時代,長期保有,威信財システム
- 横穴系埋葬施設から見た古墳時代の地位・器物継承の背景
- 太田宏明
要旨 本稿では,横穴系埋葬施設で見られる複数埋葬の状況や群集墳における墓域形成過程を分析した。また,あわせて同一首長墓系譜における先代首長墓の埋葬施設が次世代首長墓の埋葬施設へどのような影響を与えているのかについても検討を行った。このような分析,検討の結果,同一埋葬施設や墓域を共同利用した集団とは永続性を欠き,世代を超えて地位や器物を継承させる際に十分に機能しうるものではなかった点を指摘した。また,これをふまえて,古墳時代後期では,中世のような家系,あるいは近世のような直系家族が成立し,この内部で地位と財の一括継承が行われたことは想定しにくいことを指摘した。キーワード 横穴系埋葬施設,地位・器物継承,社会集団,異世代間の社会関係,家族形態
論文
- 石刃石器群の起源からみた日本列島における後期旧石器文化の成立
- 国武貞克・國木田大・佐藤宏之
要旨 列島の石刃の起源を探るため長野県香坂山遺跡とユーラシア大陸の初期後期旧石器時代(IUP)石器群を詳細に比較した。大型石刃生産はユーラシアIUPと同じく中期的な平面剥離型と後期的な立体剥離型,中間的な小口面型の3者による。小石刃生産はユーラシアIUPの示準石器とされる彫器状石核と横断面取石核による。そして中期的な尖頭器を伴う。この技術組成の共通性から香坂山遺跡はユーラシアIUPの系譜上にあると評価される。放射性炭素年代値が36.8ka calと列島最古の石刃石器群であり,37.5ka cal BP迄に成立した台形様石器群と35.3ka cal BP迄に一体化し列島の後期旧石器文化の基本をなす二極構造が成立した。これが後期旧石器文化成立に係る構造変動の実態である。キーワード 香坂山遺跡,フッジ遺跡,オビ・ラフマート洞窟,カラ・ボム遺跡,水洞溝遺跡
- 尖頭器石器群の顕在化と狩猟採集民の移動形態
- 山地雄大
要旨 石材消費過程に着目し,狩猟採集民の移動形態の推移を描き出すことで,尖頭器石器群顕在化の背景を検討することを試みた。 石材を繰り返し補給しながら広域移動する場合は,豊富な石材をもとに規格的な縦長剝片生産を維持し,軽微な加工を通じてナイフ形石器を製作した。それに対して,石材補給の頻度を低下させ,狭小な範囲で移動を繰り返す場合では,規格的な縦長剝片生産を維持できず,多様な素材をナイフ形石器に近い形状に仕上げていくために,二次加工を卓越化させることで結果として尖頭器が作られた可能性があるなど,移動生活の各場面で状況に応じて,複数の技術を取捨選択することで,尖頭器石器群が顕在化した可能性を指摘した。キーワード 後期旧石器時代,尖頭器石器群,石器製作技術,移動形態
書評
- 池谷和信 編『アイヌのビーズ―美と祈りの二万年―』
- 河村好光
新刊紹介
- 篠田謙一 著『人類の起源―古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」―』
- 岡崎健治
- 宮城弘樹 著『琉球の考古学―旧石器時代から沖縄戦まで―』
- 瀬戸哲也
- 山本孝文・青木 敬・城倉正祥・寺前直人・浜田晋介 著『考古学概論―初学者のための基礎理論―』
- 森 貴教
考古フォーカス
- ミクロネシア連邦ヤップ州 ヤップの石貨
- 石村 智
- 高知県南国市 若宮ノ東遺跡の発掘調査
- 南国市教育委員会
考古学研究会第68回総会・研究集会報告
全国委員会議事抄録