<考古学研究会事務局>
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会誌『考古学研究』
目次
第70巻 第1号(通巻277号)
2023年6月
展望
- 日本学術会議の勧告と声明について
- 常任委員会
- 岡山の「建国記念の日」を考える県民のつどいで学問の自由と思想統制について考える
- 村田秀石
- 2022年度の「陵墓」調査見学参加記
- 木村 理・澤田秀実・清野孝之・中久保辰夫
- 【連載】現代社会と考古学④ ―終結―
- 長友朋子
論文
- 西日本磨消縄文土器の施文技法と地域性
- 幡中光輔
要旨 本稿では,縄文土器の文様変化の要因や地域性の新たな一側面に照射するため,縄文時代後期初頭の西日本で広域的に展開した磨消縄文土器を対象に,文様の基層的属性である施文技法に注目して定量的な分析を実施した。分析では磨消縄文土器の縄文帯を施文技法で分類し,山陰中央部と瀬戸内東部の時期的変遷を比較検討した。分析の結果,施文技法の地域差が徐々に顕在化して地域性が強化され,瀬戸内東部では2本沈線の縄文帯から3本沈線の縄文帯が派生して創出された可能性を提示した。さらに施文技法の地域的展開に注目すると,文様の基層的属性の施文技法がもたらす土器文様の変化は,各地域や集団が持つ固有の施文規範の影響を色濃く反映すると考えられる。
キーワード 縄文時代後期初頭,磨消縄文土器,施文技法,地域性
- 弥生時代後期から終末期における収穫具の変遷―西日本を対象として―
- 松尾樹志郎
要旨 本稿は弥生時代後期から終末期における収穫具について器種の変遷と収穫技術という観点から論じたものである。弥生時代後期には鉄鎌,摘鎌といった鉄製収穫具が出現するが,石庖丁や木庖丁の利用も継続し石器から鉄器への移行が単純ではないことが指摘されてきた。しかし器種の変遷や収穫技術の具体的な様相についての広域的な検討は不十分であった。本稿では器種ごとの消長と,地域・遺跡レベルでの器種構成を検討し,その結果,収穫技術自体は基本的に維持される一方で,各地域での石材・鉄素材の入手難易度の差異に起因して器種構成に複雑な地域差が生じていることを指摘した。
キーワード 収穫具,弥生時代,鉄鎌,摘鎌,石庖丁
- 弥生時代後期から古墳時代前期における食器組成の地域差
- 品川 愛
要旨 弥生時代後期から古墳時代前期の近畿地域 (河内・和泉地域),中部瀬戸内地域(吉備・讃岐地域)を対象として,食器組成の地域差とその発現の要因について考察した。まず,弥生,古墳時代の食器と考えられる高坏と鉢について,形状と法量(口径)によって分類し,各器種の組成比率を時期,地域別に検討した。その結果,弥生時代後期初頭~前葉には各地で高坏が主として使用されていたが,弥生時代後期中葉に鉢が普及し,弥生時代終末期~古墳時代前期前半には,高坏が根強く残る地域と高坏に代わって鉢が主体となる地域とに分かれることが明らかになった。また,その地域差が解消される時期が古墳時代前期後半であり,再び高坏を主体とした器種組成へと戻ることが判明した。そして,各器種の用途差について,組成比率の変化の様相と場に応じた器種の使い分けに焦点を当てて検討し,地域差の要因について考察した。
キーワード 弥生時代,古墳時代,近畿地域,中部瀬戸内地域,食器組成
- たたら吹製鉄の高殿遺構
- 上栫 武
要旨 高殿はたたら吹製鉄で製鉄操業を行う製錬場で,それ自体をたたらと呼称することがある。本稿では,高殿遺構の考古学的検討を行って時期的・地域的特性を導き出し,18世紀中葉に大きな画期を見出した。その内容は高殿規模の大型化とそれに対応した安定構造の採用(丸打高殿が円形から隅丸方形へ変化),空間利用の定型化である。これらの変化の背景には高殿の長期利用,いわゆる永代操業への対応を指摘する。また,上部構造の変化も検討し,下屋の設置が中国地方でも西部地域で確認されることを指摘した。下屋の設置は,建物構造の変化という現象面だけではなく,経営全般を見越した対応策と評価した。
キーワード 高殿,たたら吹製鉄,大型化,長期利用,下屋
書評
- 三阪一徳 著『土器製作技術からみた稲作受容期の東北アジア』
- 宮地聡一郎
考古フォーカス
- ホンジュラス共和国 コパン(Copan)遺跡
- 中村誠一
- アメリカ合衆国ユタ州 ケイヴタワーズ遺跡とミュール渓谷
- アンナ・ニルセン,西原和代
考古学研究会第69回総会・研究集会報告