目次
第56巻 第1号(通巻221号)
2009年6月
展 望
発掘調査資格制度の課題
岸本道昭
『文化財行政のあり方勉強会』—兵庫県内行政組織における文化財担当者の模索—
山本 誠
日南市の歴史を活かしたまちづくり—文化財担当職員としての関わり—
岡本武憲
「吉備路郷土館の未来を考える」シンポジウム参加記
幡中光輔
2008年度陵墓調査限定公開・立入り観察報告
菱田哲郎・野崎貴博
論 文
朝鮮半島中南部における有柄式磨製石剣の編年と地域性
朴宣映
要旨 朝鮮半島中南部の有柄式磨製石剣は,型式学的に検討すると1〜3期に編年が可能である。特に二段柄式石剣は,その段連結部に形態変遷が明瞭にうかがえ,各期をそれぞれa・b期に細分することもできる。石鏃や丹塗磨研壺など共伴遺物の変遷とも矛盾がなく,無文土器編年との整合性をはかると,1期が無文土器前期,2a期が中期前半,2b〜3期が中期後半となる。
この編年案に基づいて,有柄式石剣の地域性を検討すると,各時期に地域的偏在性が強い型式が存在し,それぞれが分布を一部重複しつつも,異にする状況が認められる。この地域性発現の背景としては,当時の社会において隣接する諸集団が水系や峠を利用して,頻繁な技術・情報のやり取りを行っており,その中で石剣製作に関する新来の技術・情報を受容・模倣したり,変容させていったためと判断される。
キーワード 磨製石剣・無文土器時代・編年・地域性・型式学的研究
陶邑編年と九州の古墳時代須恵器について
木村龍生
要旨 本論は,陶邑編年について,地方窯の製品にどこまで適用することができるのかを,九州の須恵器生産地の資料と比較して,検討したものである。その結果,形態,法量,プロポーションといった要素は,陶邑窯跡群の須恵器と九州の須恵器生産地の須恵器では斉一的な変化をたどるが,坏蓋の口縁端部の形状,坏身の口縁端部の形状,坏蓋の稜の形状,高坏の透かしの形状,蓋坏の底部の調整技法といった要素は陶邑窯跡群の須恵器よりも新しい段階まで残存することが判明した。
また,その残存期間が,各生産地により異なるため,須恵器細部の調整技法といった要素は,九州の須恵器の型式を判断する要素として,用いることが難しいということを指摘した。
キーワード 陶邑編年,地域色,九州,古墳時代,須恵器
研究ノート
コイ科魚類の咽頭歯と考古学—フナやコイを対象とした縄文・弥生時代の淡水漁撈—
中島経夫
要旨 先史時代の漁撈活動については漁具から議論されることが多く,魚類遺存体から議論されることがあまりなかった。コイ科魚類の咽頭歯は,その生物学的特性から,これらを分析することによって先史時代の人々の漁撈活動のようすを知ることができる。近畿,北陸,東海地方の縄文・弥生遺跡から出土するコイ科魚類咽頭歯遺存体について詳しい分析が行われ,多くの情報が蓄積してきた。これらの分析結果にもとづき,縄文・弥生時代の淡水漁撈について考察した。これらの地域では,フナやコイを中心としたコイ科魚類を対象とした産卵期の漁撈がさかんに行われた。産卵期に大量にとれるフナを保存食に加工することが縄文時代から始まり,弥生時代になると,フナの保存加工とともに,原始的養鯉が行われるようになった。
キーワード 縄文・弥生時代,琵琶湖地域,コイ科魚類咽頭歯,淡水漁撈,養鯉
書 評
佐原 真著 春成秀爾編『縄紋土器と弥生土器』
森岡秀人
新刊紹介
毛利和雄著『世界遺産と地域再生—問われるまちづくり—』
岩本正二
考古学の新地平
考古学と文献史学(1) 蝦夷と城柵
樋口知志
地域情報
兵庫だより 博物館等における埋蔵文化財活用の新たな試み
多賀茂治
日本の遺跡・世界の遺跡
岩手県北上市国見山廃寺跡
杉本 良・岩田貴之
〈続報〉栃木県矢板市高原山黒曜石原産地遺跡群剣ヶ峯地区遺跡(2)
栃木県矢板市教育委員会事務局
ロシア ニジネタンボフカ5遺跡
松本 拓・内田和典
考古学研究会第55回総会・研究集会報告
資料
埋蔵文化財発掘調査体制等の整備充実に関する調査研究委員会(文化庁)
『埋蔵文化財保護行政における 資格のあり方について(中間まとめ)』(平成21年3月31日)
会員つうしん