考古学研究会
<考古学研究会事務局>
〒700-0027
岡山県岡山市北区清心町16-37長井ビル201
TEL・FAX 086-255-7840
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会誌『考古学研究』
目次
第59巻 第4号(通巻236号)
2013年3月
展 望
フランスの世界遺産ネットワーク小川裕見子
土師ニサンザイ古墳(東百舌鳥陵墓参考地)限定公開参加記
笹栗 拓・仲辻慧大
第7回世界考古学会議(WAC-7)に参加して
上月克己
考古学研究会第59回総会講演「現代社会と考古学」要旨
現代社会と考古学の交錯—科学論の観点から—小野 昭
考古学研究会第59回総会研究集会趣旨説明・報告要旨
『遺跡・遺産・考古学—調査研究/マネジメントの検証—』の射程岡村勝行・内山敏行
遺跡調査と保護の60年—変遷と特質—
坂井秀弥
朝鮮古蹟調査事業と「日本」考古学
吉井秀夫
時空間情報科学・サービスとしての遺跡調査と情報統合
—ドキュメンテーションとローカルナリッジベース—
津村宏臣
パブリック・アーケオロジーの観点から見た考古学と埋蔵文化財と文化遺産
松田 陽
論 文
東の山と西の古墳北條芳隆
要旨 大和東南部に築かれた古墳群と古市・百舌鳥古墳群は東西の関係にあり,おおむね同緯度で展開する。相互の位置情報をみれば,主要な巨大前方後円墳は,奈良盆地の東に連なる龍王山山帯の峰峰の真西に置かれるべく築かれた可能性が高いとの所見が導かれる。このような現象は,大和東南部古墳群から始まった「坐東朝西」の方位観念が西へと延伸する過程でもあったと考えられる。
キーワード 龍王山,大和東南部古墳群,古市古墳群,百舌鳥古墳群,坐東朝西
南武蔵における戦国期の土器皿からみた地域圏—15世紀後半〜16世紀代を中心として—
永越信吾
要旨 南武蔵を三つの地域に分け,15世紀後半〜16世紀の土器皿の器形と,その構成を分析した。この結果,南武蔵全域に分布する器形,一定の地域にしか分布しない器形が認められた。後者の器形は南武蔵内部において小地域圏が形成されていたことを示すものと考えた。本稿では,土器皿の性格を主に酒盃としての視点から,広域に認められる器形は,南武蔵内の国人領主間の酒宴儀礼,あるいは国人領主と村落の地侍・農民層との支配関係を確認する場での酒宴儀礼に用いられたものと捉え,小地域のみに特有の器形は,城館にとどまらない在地社会の村落内の惣的な場での使用が想定され,地域性を示すものと考えた。このような土器皿の様相から,南武蔵では,南武蔵全域と,その内部に複数の小地域圏が確立した,政治性を帯びた二重の地域圏構造が成立していたことを想定した。
キーワード 南武蔵 在地系土器皿,酒宴儀礼,法量,小地域圏
研究ノート
縄文晩期土器の製作工程の変化—近畿地方における事例研究—松﨑健太
要旨 近畿地方では縄文時代後期から続く伝統的な深鉢器形から,晩期前半に岩田系深鉢の影響下で新しく甕状の器形へ変化することが知られている。またそれに伴って器面調整が巻貝条痕から二枚貝条痕へ変化し,新しくケズリ調整が卓越することなどが指摘されてきた。本稿では器形と器面調整技法の対応関係に着目し,近畿地方晩期前半にみられる製作技術の変化について考察を加える。その結果,器形と器面調整技法の有意な関係性が把握でき,これを土器製作工程の中で理解することで大きな変化が起こっていたことを明らかにできた。
キーワード 縄文時代晩期,近畿地方,深鉢形土器,土器製作技術,器面調整
オマーン内陸域における歴史景観分析—累積可視域評価による中近世の景観の独自性—
宇佐美智之
要旨 本稿では,景観の理解に向けた試みとして,GISの技術を基盤とした分析と結果の評価について実践的に検討した。具体的には,中近世におけるオマーン・ニズワの建造物群を対象に,可視域の計量的分析と累積可視域の評価,傾向面分析の適用を試行した。結果,中近世の中で,対象相互の可視域が集中的に重複する場所への全体的傾向と,それに基づく重心・周縁としての空間的まとまりの存在を明らかにした。また,この背景として,社会的中心の新設に伴う,ニズワ独自の方法に基づく「場所の確立」の可能性を指摘した。
キーワード 景観,GIS,オマーン,累積可視域,傾向面分析
戦時体制下の古墳保存行政
尾谷雅比古
要旨 宮崎県新田原古墳群・六野原古墳群,佐賀県目達原古墳群に戦時体制下,陸軍飛行場が建設され多くの古墳が破壊された。この時,宮内省は,古墳の御霊を別の場所に移す「改葬」という名目によって,現状保存の方針を崩し古墳破壊を認めた。その中で,都紀女加王墓の治定は,宮内省にとって軍との折衝の中で唯一面目を保ったものであった。また,文部省は学術調査と調査報告書を刊行することを条件に宮内省に追随し古墳の破壊を認めた。この3ヵ所の調査改葬以降,宮内省は通牒を発し,古墳の取り扱いについて国防優先を法令的にも明確化した。
このことは,古墳保存行政が最優先課題であった国防施策によって弱体化したことを示している。
このことは,古墳保存行政が最優先課題であった国防施策によって弱体化したことを示している。
キーワード 戦時体制,改葬,古墳保存行政,陵墓治定,古墳破壊
書 評
中村大介著『弥生文化形成と東アジア社会』宮本一夫
史跡公園は今・保存と活用への新たな動き
広域遺跡保存整備の到達点とこれから—北海道標津遺跡群—小野哲也
日本の遺跡・世界の遺跡
鹿児島県奄美大島 赤木名城とその文化的景観
中山清美
アメリカワシントン州 オゼット遺跡とマッド・ベイ遺跡
水沢教子・菅野智則・山本直人・松井 章
会員つうしん
会 告