考古学研究会
<考古学研究会事務局>
〒700-0027
岡山県岡山市北区清心町16-37長井ビル201
TEL・FAX 086-255-7840
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会誌『考古学研究』
目次
第60巻 第3号(通巻239号)
2013年12月
展 望
福島県の原発事故被災地を訪問して—遺跡現地に立ち・考えること・忘れないこと—西川修一
文化財の返還について—対馬の仏像問題解決に向けて—
森本和男
考古学研究会第59回総会講演 現代社会と考古学の交錯—科学論の観点から—
小野 昭
考古学研究会第59回総会研究集会報告(下)
朝鮮古蹟調査事業と「日本」考古学
吉井秀夫
要旨 朝鮮古蹟調査事業は,朝鮮総督府からの嘱託により,東京帝国大学・京都帝国大学の研究者をはじめとする日本人の手によって進められ,本事業から朝鮮人は排除されていた。出土遺物やガラス乾板は朝鮮総督府博物館で保管される中,持ち帰った図面・野帳などをもとに内地で報告書を作成する体制は,報告書刊行の阻害要因となり,敗戦後は資料の分断をもたらした。また,本事業における調査技術や調査体制は,戦前および戦後の「日本」考古学にさまざまな影響を与えた。そして,各地での博物館設立・運営と,それに関わった在朝日本人の動向には,内地における郷土博物館運動などと連動する面と,植民地朝鮮に特有な面が見いだされる。
キーワード 植民地朝鮮,朝鮮古蹟調査事業,金冠塚,測量技術,博物館
時空間情報科学・サービスとしての遺跡調査と情報統合
—ドキュメンテーションとローカルナリッジベース—
津村宏臣
要旨 私たちが遺跡や遺産,文化財とよぶ存在が何か,についてその「情報」の側面から検討を進めた。まず,視点の論理構造の検討や現在公開されている「情報」の傾向から,ものの定義が,「情報」化の主体者により多様となる事実を明らかにした。次に,「情報」という用語そのものの多義性を整理し,考古学や文化財学で,その多義性がどの様な影響をもつか,あるいはどの様な実状にあるかを検討した主体的認識「情報」であるIntelligenceと,「情報」を客体化するDataのドキュメンテーションの間にKnowledgeが存在し,その評価には「情報」の自己組織化が利用できることを示した。この方法を既刊の『考古学研究』誌に適用し,その主体である私たちの変遷を探った。最後に,私たち以外の認識しうる「情報」を集積する仕掛けとしてのNPO法人の取り組みなどから,サービスとしての情報統合のあり方や将来を展望した。
キーワード 情報,時空間情報科学,ローカルナリッジ,自己組織化,NPO法人
考古学研究会第59回総会研究集会報告
コメント・全体討議
論 文
石材資源調達の経済学—石器インダストリーの空間配置と技術に関する考察—山田 哲
要旨
本論は,石器時代人が各地に遺した石器製作作業の痕跡,すなわち石材産地を起点として始まる石器インダストリーの空間配置の意味を,石材資源の調達の効率という観点から探ることを目的とする。特に石器製作技術の構造が石材資源の調達効率に及ぼす影響に焦点をあてながら,北海道における後期旧石器時代前半期の石器群,後期旧石器時代終末期の後期細石刃石器群,縄文時代早期の石刃鏃石器群の素材剥片(石刃)生産について検討する。その結果,素材剥片(石刃)の製作技術には,構造的な違いによって,産地付近からの剥片・石刃の搬出が石材資源の効率的な調達をもたらしやすいものから石核あるいは石核原形の搬出がそれをもたらしやすいものまで著しい幅があることが明らかとなった。
キーワード
石材資源,石器インダストリー,石刃製作技術,北海道,行動生態学
環付足金具をもつ鉄刀の編年
豊島直博
要旨
環付足金具は刀の鞘の片面に取り付けられる佩用金具である。これまで系譜や使用法は論じられてきたが,金具そのものの分類はなされてこなかった。本稿では,形態によって環付足金具を6型式に分類し,5段階に編年した。また,編年に際しては共伴する須恵器や石室の年代観ではなく,飛鳥地域の出土例と文献史料を重視して暦年代を推定した。
編年と分布を総合すると,環付足金具をもつ鉄刀の生産と流通は,7世紀第Ⅱ四半期に変革を迎える。背景には舒明朝の政治的動向が色濃く反映されており,個別の武器研究が古代史研究にも貢献できることを強調した。今後は本稿の編年を柱に,環頭大刀,円頭大刀,方頭大刀など,大刀の形式を超えた編年の追求が急務である。
編年と分布を総合すると,環付足金具をもつ鉄刀の生産と流通は,7世紀第Ⅱ四半期に変革を迎える。背景には舒明朝の政治的動向が色濃く反映されており,個別の武器研究が古代史研究にも貢献できることを強調した。今後は本稿の編年を柱に,環頭大刀,円頭大刀,方頭大刀など,大刀の形式を超えた編年の追求が急務である。
キーワード
環付足金具,装飾付大刀,木製円頭大刀,方頭大刀,舒明朝
書 評
水ノ江和同 著『九州縄文文化の研究—九州からみた縄文文化の枠組み—』雄山閣瀬口眞司
地域情報
長野だより—恒川遺跡群と地域づくりの取組み—澁谷恵美子
日本の遺跡・世界の遺跡
香川県さぬき市 津田古墳群さぬき市教育委員会
聖地エルサレム
石村 智