<考古学研究会事務局>
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会誌『考古学研究』
目次
第61巻 第1号(通巻241号)
2014年6月
お知らせ
展 望
- 群馬県金井東裏遺跡の発掘調査と「古墳総合調査」の取り組み
- 深澤敦仁
- 考古学研究会関西例会30周年記念シンポジウム
『新資料で問う古墳時代成立過程とその意義』参加記
- 上田直弥
- 高松塚古墳壁画修理作業室 第2回特別公開に参加して
- 魚津知克
- 野口王墓古墳(天武・持統天皇檜隈大内陵)の立ち入り観察
- 東影 悠
- 第46回「建国記念の日」を考える県民のつどい(岡山)参加記
- 古市秀治
論 文
- ヤブチ式土器と貝器文化 ―沖縄県南城市武芸洞遺跡出土資料の分析から―
- 山崎真治
要旨
沖縄先史文化における剝片石器類の希少性に関する解釈として,従来から貝類やタケの利用が提案されてきたが,その実態に立ち入った研究事例は乏しい。本稿では,沖縄県南城市武芸洞遺跡(ガンガラーの谷内)の発掘調査によって得られた,ヤブチ式期の貝鏃・貝刀を含む真珠貝製貝器類について検討を行い,これらが剝片石器と同様の狩猟具や解体具として製作・使用されていたことを提案した。その背景には,石材分布が限定的で,良質な石器石材の入手が容易でない沖縄の資源環境的要因とともに,そうした環境に適応した人類集団による,積極的な貝類資源の開発という文化的コンテクストがあったと考えられる。すなわち,ヤブチ式期の貝鏃に代表される貝器文化は,沖縄という隔絶された資源の乏しい島嶼環境に,一定の期間をかけて適応した人々が生み出した個性的な文化であったと結論づけることができる。また,こうした貝器類は,その検出しづらさ,利器としての認定の困難さから見て,現状の報告例は,実際に製作・使用されたもののごく一部に過ぎないと考えられ,今後こうした貝器類の検出にいっそうの注意を払っていく必要がある。
キーワード 沖縄,武芸洞遺跡,ヤブチ式土器,貝鏃,貝器
- 瀬戸内海東部における凸帯文土器の変遷と展開
- 妹尾裕介
要旨
本論は,凸帯文土器の変遷過程を明らかにし,その最終段階を決定することを目的としている。凸帯文土器は,つづく弥生土器とともに水田稲作農耕文化の成立を考える上で重要な遺物である。まず,凸帯文土器の主要器種である屈曲深鉢形を分析対象に型式学的な検討をした。滋賀里Ⅳ式,船橋式を再定義し,長原式に地域差が内在していることをふまえて細分した。結果,屈曲深鉢形は凸帯施文方法の違いから,型式学的には9段階に分かれる。つぎに,他の器種とのセット関係をとらえ,縄文時代晩期末の土器様式としての変遷を明らかにし,従来の近畿編年を5時期に区分した。その上で,縄文土器における最終段階の様式内容を示した。
キーワード 型式学的検討、様式論、長原式の地域差、河内地域、縄文土器最終段階
- 紀伊における飛鳥・白鳳期の軒瓦の系譜と地域性
- 丹野 拓
要旨
紀ノ川流域の古代寺院は下流へ行くほど遺存状態が悪く,和歌山平野では発掘された寺院が一例もない。そこで本稿では紀伊の古代寺院を復元的に考察するため,紀ノ川下流域の軒瓦について表採資料11型式を加えて再検討し,7世紀中葉に素弁蓮華紋や朝鮮半島系の軒丸瓦が多数分布する独自性の強い地域であったことを確認した。
7世紀後葉には紀伊全域で古代寺院が造営されるが,紀ノ川下流域とその周辺地域ではそれぞれ別型式の軒瓦が分布域を形成しており,地域を越えた軒瓦の伝播は一切みられない。飛鳥・白鳳期の軒瓦の分布境界は紀ノ川沿いの兄山と和泉山地の雄山にあり,「改新の詔」の畿内南限と一致する状況が確認される。
キーワード 紀伊、朝鮮半島、上野廃寺系軒瓦、軒瓦分布域、畿内南限
- 韓半島青銅器時代における集落の石器組成比較と生業
- 孫晙鎬(中村大介訳)
要旨
青銅器時代の大規模集落は,石器組成から検討すると,基本的には農耕を基盤とする生業を営むが,立地に応じて地理的環境を活用した狩猟や採集など,多様な活動も行われる。一方で水稲農耕の集約化によって生産量と農業の比重が増加するため,増大した生産物獲得を目的とした集団間の競合及び,交易を目的とした石器生産もまた拡大していく。湖西地域の青銅器時代後期の最大規模集落である寛倉里遺跡と松菊里遺跡は,石器組成では農耕を中心とする類似した生業であるが,周辺には特殊な役割を担う集落が登場する。特に交易関連遺跡は,交易での優越性等を通じて食料を獲得する様相が推定され,青銅器時代後期における社会経済の変革を示している。
キーワード 韓半島、青銅器時代、石器組成比、生業、社会経済
考古フォーカス
- 宮城県南三陸町 新井田館跡の発掘調査
- 南三陸町教育委員会
- 大阪府藤井寺市 野中古墳
- 中久保辰夫
考古学研究会第60回総会・研究集会報告
会員つうしん