<考古学研究会事務局>
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会誌『考古学研究』
目次
第63巻 第1号(通巻249号)
2016年6月
熊本地震により被災された会員のみなさまへ
展 望
- 松帆銅鐸発見記念シンポジウムに参加して―淡路島の多数埋納銅鐸に関する最新の成果―
- 脇山佳奈
- 渋谷向山古墳事前調査のいわゆる「限定公開」参加
- 原田昌浩・金澤雄太
- 2015年度「陵墓」立ち入り観察に参加して―渋谷向山古墳の検討―
- 澤田秀実
- 【連載企画】 アートな考古学の風景 ④共に語らい,共に愉しみ,共に拓く
- 中村 大・松尾 惠
論 文
- 「藻塩焼く」の考古学―縄文時代における土器製塩技術の実験考古学的検討―
- 阿部芳郎
要旨 縄文時代の製塩は,土器をもちいたということ以外には,直接的な出土資料から具体的な技術を復元することは難しいとされてきた。しかし,近年になり縄文時代の製塩址から海藻に付着する微小生物遺存体が発見され,海藻を灰にして利用したことが実証され,製塩技術史の解明が大きく進展した。
本論は,これらの成果をふまえて製塩行為の歴史的な実態を考える時,次の課題となる藻灰と土器を利用した製塩技術を具体的に解明するために,製塩遺跡における製塩土器や微小生物遺存体の産状を観察し,これを基にして土器製塩の工程をモデル化し,その妥当性を実験によって検証した。
その結果,従来説である海水の直煮よりも効率的な塩の結晶化が確認できた。本論ではこれまでの定説にある藻灰を濃縮媒体として用いたという説を再検討し,藻灰は結晶媒体として海水の煮沸時に利用したものと考え,これを「補注式灰煮沸法」と命名した。
さらにこの結論を踏まえて,日本列島の土器製塩技術圏は縄文時代以降,古代に至るまで東西の時空間の中で個別の由来をもつものとして区分して考えられてきたが,両者は藻灰を結晶媒体として利用する点では共通の技術基盤の上に成立したものであることを指摘した。
また,製塩土器の存在だけでなく,製塩行為を多視点的に分析することにより見えてくる製塩技術の多様性について議論する必要性も指摘した。
キーワード 縄文時代~古代,製塩行為,結晶媒体,補注式灰煮沸法,実験考古学
- 結合構造からみた組合せ鋤の機能と地域性―伊勢湾沿岸以西を中心に―
- 鶴来航介
要旨 本論は,主に弥生時代から古墳時代前期にみられる組合せ鋤の形態的変化をとらえるとともに,刃部形状の分析をもとに西日本の鋤利用を見直すことを目的とした。筆者は結合構造の多様性に着目し,柄孔の形状が次第に複雑化すること,また弥生時代後期に身縦断面形態が湾曲するⅠ類から直線的なⅡ類へと転換することを明らかにした。しかし着柄時の形態では,屈折鋤が時期を問わず多数派を占める。
また刃部の形状や出土状況を検討し,組合せ鋤が「すくう」「掘る」という二つの機能をもつことを示した。掘削の道具としての組合せ鋤の利用状況は地域によって異なり,その差は森林資源の量や生産流通体制に起因する可能性がある。
キーワード 組合せ鋤,結合構造,機能,地域性
- 盤上遊戯「 樗蒲 」の基礎的研究
- 小田裕樹
要旨 古代都城・官衙遺跡を中心に円形の列点記号が記された器物が出土しており,この記号は古代日本において一定程度分布していたとみられる。また,この列点記号の配列は,朝鮮半島の「ユンノリ(윷놀이)」とよばれる盤上遊戯の盤面に通じるものである。『万葉集』の研究成果から,古代日本にユンノリに似た「樗蒲(かりうち)」とよばれる盤上遊戯が普及していたと想定されており,この列点記号はその盤面であったと考えられる。また,列点記号の分析から,「樗蒲(かりうち)」は場の状況に応じて簡単に遊戯をおこなえる点が特徴とみられ,正倉院に盤・局が伝わる囲碁や双六よりもさらに広い階層に普及していた可能性が考えられる。
キーワード 日本古代,朝鮮半島,列点記号,かりうち,ユンノリ
新刊紹介
- 阿子島香編『北の原始時代』
- 徳富孔一
- 小畑弘己著『タネをまく縄文人 最新科学が覆す農耕の起源』
- 中村 豊
考古フォーカス
- マリ共和国 エスーク・タドメッカ遺跡
- サム・ニクソン(清家章訳)
- 奈良県大和郡山市 郡山城天守台の発掘調査
- 大和郡山市教育委員会
考古学研究会第62回総会・研究集会報告
例会レポート
岡山例会・日本旧石器学会の合同研究集会
「隠岐の黒曜石獲得と利用について」を開催しました!
お知らせ
全国委員つうしん
会員つうしん