会誌『考古学研究』

目次

第63巻　第4号（通巻252号）

2017年3月

展望

• 特集　第８回世界考古学会議京都大会（WAC-8）から考える２

国家形成と地域社会
辻󠄀田淳一郎
多様な分析科学による古代の食性復元─セッション運営・参加報告─
渋谷綾子
出発点としてのWAC-8
ライアン・ジョセフ
WAC-8における決議の採択
松田　陽

• ハノイ国家大学人文社会科学大学の考古学実習を見学して
• 菊池誠一
  
• 能褒野古墳群（能褒野墓）の立会調査見学参加記
• 高田健一
  
• 第３回全国史料ネット研究交流集会（愛媛）参加記
• 吉田　広
  
• 【連載企画】近・現代の戦争遺跡　②沖縄県の戦争遺跡調査の現状
• 瀬戸哲也

考古学研究会第63回総会研究集会趣旨説明・報告要旨

• 趣旨説明 「災害と考古学―持続と断絶―」
• 石村　智・菊地芳朗
  
• 火山災害への狩猟採集社会の対応―九州地方の事例を中心として―
• 桒畑光博
  
• 局地的災害痕跡と埋蔵文化財調査―京都盆地東北部の弥生時代の土砂移動とその前後―
• 冨井　眞
  
• 近世琉球における津波被害と村落変遷―石垣島安良村跡発掘調査を中心に―
• 石井龍太
  
• メソアメリカ文明と火山噴火―イロパンゴ火山の噴火を中心に―
• 市川　彰

論文

• 縄文時代後期広域土器分布圏の変遷とその特質―器種構成の時空間的検討を通して―
• 福永将大
  要旨　本稿は，縄文時代後期広域土器分布現象を器種構成という分析視点から再検討するものである。従来の土器研究では特定型式や諸属性が主な分析対象とされてきたが，それらは土器の一要素にすぎず，土器という生活用具のセット関係を表す器種構成を分析対象とすることは重要であると考えた。本稿では器種構成の時空間的検討を行い，縄文時代後期広域土器分布圏の変遷，またその背後にある地域関係や集団関係の実態を検討した。その結果，縄文時代後期中葉以前と以後では，異なるコミュニケーション・システムを背景に広域土器分布現象が発現している可能性があり，そうした現象と関東系土器群の動向は密接に関係していることを指摘した。

  キーワード　土器，器種構成，土器様式圏，縄文時代後期，列島西部
• 古代畿内における集落再編成と土地開発
• 道上祥武
  要旨　6世紀後半以降，畿内の集落は沖積地などの低地から丘陵縁辺や段丘といった高地へと移動し，低地部には7世紀を通して耕地化が施された。集落の移動に伴う耕地化は畿内地域で広汎にみられ，7世紀を通して列島規模に拡散する。これは，低地部の大規模な開発を目的とした中央権力による集落の再編成であった。増大した耕地は7世紀後半における条里地割の施工へと連続し，古代国家の経済的基盤となっていく。また，こうした集落に対する統制が6世紀後半に始まる事実は6世紀後半段階における中央権力の強大化・地域支配体制の成立を示しており，前方後円墳の廃絶といった古墳時代から古代への社会変革が集落に現れているのである。

  キーワード　畿内，古墳時代，飛鳥時代，集落再編成，耕地開発

書評

• 小茄子川歩著『インダス文明の社会構造と都市の原理』
• 上杉彰紀
• 矢野健一著『土器編年にみる西日本の縄文社会』
• 中村耕作

新刊紹介

• 樋上　昇著『樹木と暮らす古代人　木製品が語る弥生・古墳時代』
• 中原　計
• 森下章司著『古墳の古代史　東アジアのなかの日本』
• 實盛良彦
• 下垣仁志著『日本列島出土鏡集成』
• 福永伸哉
• 加藤理文著『日本から城が消える』
• 楠　寛輝
• 頴原澄子著『原爆ドーム　物産陳列館から広島平和記念碑へ』
• 妹尾周三

考古フォーカス

• 香川県高松市　相作馬塚古墳
• 梶原慎司・高上　拓（高松市教育委員会）
• アメリカ合衆国イリノイ州　カホキア遺跡
• 三好　玄