会誌『考古学研究』

目次

第64巻　第4号（通巻256号）

2018年3月

展望

• 特集「学校と考古学」

学校所在資料論の構築
村野正景・和崎光太郎
学校所在資料の価値－考古学・人類学模型標本を例に－
平田　健
学校所在資料の活用－学校現場に聴く－
島田雄介・神野晋作・八田友和
学校と考古学をつなぐ新たな取組
市元　塁・瀬谷今日子・村野正景

• 【連載企画】近・現代の戦争遺跡

⑤イングランドの事例紹介
川本真浩
⑥冷戦遺跡に見るアート作品と壁画の重要性－東側と西側からの視点－
ジョン・スコフィールド

• 考古学動作連鎖研究の社会的効用－遺跡博物館での活用法－
• 会田容弘
• 日本考古学用語和独英オンライン辞典の紹介
• ウェルナー・シュタインハウス，ウルリッヒ・アッペル
• 第4回全国史料ネット研究交流集会参加記
• 古市秀治
• 考古学研究会活動のデジタル化に関する現状と展望
• デジタル化対応委員会

考古学研究会第64回総会講演要旨

• モニュメントは権力の象徴なのか－南米アンデス文明における事例を中心に－
• 関　雄二

考古学研究会第64回総会研究集会趣旨説明・報告要旨

• 趣旨説明「権力とは何か－祭祀・儀礼と戦争から考える－」
• 後藤　明・辻田淳一郎
• 狩猟採集社会における戦争－集団間の暴力を促進／抑制する要因について考える－
• 松本直子
• 弥生時代青銅器祭祀と権力－銅鐸を中心に－
• 北島大輔
• 日本における鉄製武器の生産・流通と国家権力の形成
• 豊島直博
• 古代寺院と国家と地域社会
• 梶原義実

論文

• 弥 生時代の＜神話＞－いわゆる「連作四銅鐸」の分析から－
• 溝口孝司
  要旨　この論文は，いわゆる「連作四銅鐸」に描かれた図像表象群の 意味にアプローチするものである。具体的には，四銅鐸の図像表象群が構成する体系の背後にある「物語的ななにか（・・・）」 をクロード・レヴィ＝ストロース氏が定義するところの＜神話＞として理解することの可能性を，氏の＜神話分析＞の手法を応用して検討する。分析結果は，レ ヴィ＝ストロース氏による＜神話＞の定義属性，すなわち「二項対立」，「変換」，「媒介」すべての存在と作動が四銅鐸の図像表象の布置に読み取れることを 明らかにし，この物語が＜神話＞と呼ばれるにふさわしいものであることを示す。また，その内容と機能は，【当該時期の＜生活世界＞の構成要素（事象・事 項）がなぜそこにそのように（≒相互に調和的に，相互に均衡的に）存在することになったのかの説明】として理解されることが明らかにされる。さらに，そこ に表象された諸生物間の関係が，相互の共時的変換（・・）可 能性を基盤とするそれと，相互間の通時的変容（・・）可 能性を基盤とするそれとの過渡的なものであることを指摘し，これが，レヴィ＝ストロース氏のいうところの＜冷たい社会＞から＜熱い社会＞への移行状況を反 映する可能性を指摘する。

  キーワード　銅鐸，図像，神話，レヴィ＝ストロース，弥生時代

• 古 墳時代洞穴墓葬の類型
• 山田俊輔
  要旨　 古墳時代洞穴墓は，西日本では単葬，東日本では複葬が主体的であり，古墳時代後期から終末期における東日本の複葬には二つの類型が認められた。洞穴墓から は骨鏃，鹿角製弣など広域に点的に分布する遺物が出土する傾向が高く，被葬者は一定の広さの海域を往来する海民であったと考えた。洞穴墓は古墳時代中期と 後期末から終末期に造営ピークが認められる。考古資料と文献史料を対比的に検討すると，中心政体によって海民への干渉が強まった時期に洞穴墓が顕著になる と理解できる。洞穴墓は，文化的他者である古墳文化との接触によって自らの集団的アイデンティティを意識し，その形成，維持のために主体的に選択された墓 制であると結論した。

  キーワード　古墳時代，洞穴墓，海民，アイデンティティ

書評

• 柳浦俊一著『山陰地方における縄文文化の研究』
• 中村　豊
• 金宇大著『金工品から読む古代朝鮮と倭－新しい地域関係史へ－』
• 豊島直博
• 小野林太郎著『海の人類史－東南アジア・オセアニア海域の考古学－』
• 後藤　明

新刊紹介

• 岡村秀典著『雲岡石窟の考古学－遊牧国家の巨石仏をさぐる－』
• 徳富孔一
• 岡田真弓著『イスラエルの文化遺産マネジメント－遺跡の保護と活用－』
• 桑原久男

考古フォーカス

• 和歌山県　磯間岩陰遺跡第1号石室の副葬品
• 清家　章
• スーダン共和国　ケルマ遺跡
• Charles Bonnet・関広尚世

たより

• 図書館と考古学
• 富山直人