<考古学研究会事務局>
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会誌『考古学研究』
目次
第65巻 第1号(通巻257号)
2018年6月
展望
- 第50回「建国記念の日」を考える県民のつどい(岡山)参加記
- 村田秀石
- 淡輪ニサンザイ古墳(宇度墓)および佐紀陵山古墳の立会調査見学
- 河内一浩・中久保辰夫
論文
- 縄
文時代廃屋墓における追葬・改葬行為
- 中村耕作
要旨 追葬・改葬は,死者への接近機会の累積という点で共通してお
り,本稿では縄文時代中期の東京湾岸において顕著にみられる廃屋墓における具体例を整理した。廃屋墓は1基に1体を葬るもののほか,姥山貝塚など中期中葉
段階における床面への複数遺体の追葬が知られてきたが,中期後葉段階での覆土に複数の遺体を葬る例の多いことも注目される。廃屋墓の多くは上屋を伴わない
窪地景観を現出させるものであり,床面への水平的追葬も間もなく複数の層位にわたって垂直的に追葬する方法へと移行する。一方,遺体の人為的移動・毀損,
覆土中での部分骨・集骨などの事例から,死後時間を経て遺体を操作する改葬行為がしばしば行われていたことも明らかである。上屋を解体した竪穴跡地利用
と,遺体の骨化には,継続的関与という共通項を指摘でき,葬送の場と遺体の扱いが連動しながら展開していったことを示している。
キーワード 追葬,改葬,累積,再構造化,二次利用
- 斧
形石製模造品の一様相-特徴的な袋斧形石製模造品の分析を通して-
- 佐久間正明
要旨 本稿は,袋斧形石製模造品に見られる不規則な穿孔が補修孔で
あることを明らかにするとともに,補修をしてまでも副葬することから,その「必要性」に触れた。また人体埋葬を伴わない鉄器埋納施設においては,石製模造
品の「希少性」を指摘した。
石製模造品出現期ほど斧形の出土割合が高く,刀子形に対し数的「優位性」が認められる。そして,当初は鉄斧を比較的忠実に模倣していたが,しだいに省略
化されたもので占められるようになる。
斧形に代表される石製模造品全体の変化は,農工具形石製模造品のセット関係の変化,そして,刀子形を中心とする多量埋納への変化に連動するものであった
可能性を指摘した。
キーワード 古墳,斧形石製模造品,補修孔,鉄斧
- 古
墳時代中期における古市古墳群出土埴輪の系統と生産
- 木村 理
要旨 古市古墳群出土の円筒埴輪の系統を整理し,編年の見直しを
行ったのち,その生産様相を復元した。そして,TK208~23型式期に,①大型古墳に属する工人集団の再編を伴う埴輪タイプの更新,②一部の小規模古墳
への,大型古墳と同一工人集団による小型埴輪の供給,③古墳群全体でみられる小型品の省力化,が行われる傾向にあることを明らかにした。そして,これらの
現象を埴輪生産のみならず,埴輪祭祀の変容,階層構造の複雑化,他の大型古墳群との関係の変化など,社会の変化と連動するものと想定した。また,これらは
従来指摘されているTK23~47型式期における画期に一部先行してみられることから,その画期を段階的に捉える必要性があることを述べた。
キーワード 古市古墳群,円筒埴輪,系統,編年,生産
研究ノート
- 釘
野千軒遺跡出土の近畿系土器群
- 福永将大
要旨 本稿では,大分県九重町所在の釘野千軒遺跡から出土した近畿
系土器群を検討した。その結果,①形態,装飾,施文手法などの諸特徴は,近畿の一乗寺K式や元住吉山Ⅰ式との類似性が非常に高いこと,②しかし,文様や胎
土等において当該期の近畿地方にはない特徴が見られ,搬入品と判断することは難しいこと,③出土している近畿系土器群の多くは注口土器であり,出土器種に
偏りがあること,を明らかにした。以上の結果を踏まえて,本事例においては,集団間の日常的な交流,転入や移住を契機とした人・もの・情報の移動を想定す
るだけでは現象を十分に説明できず,何らかの祭祀的イベントを通してそれらが行われた可能性を指摘した。
キーワード 縄文時代後期中葉,釘野千軒遺跡,土器伝播現象,集団
関係,異系統土器
書評
- 大塚宜明著『日本列島におけるナイフ形石器文化の生成-現生人類の移住と定着-』
- 絹川一徳
- 斎野裕彦著『津波災害痕跡の考古学的研究』
- 別所秀高
- 文化財保存全国協議会編『文化財保存70年の歴史-明日への文化遺産』
- 野崎貴博
新刊紹介
- 野尻湖発掘調査団著『野尻湖のナウマンゾウ-市民参加でさぐる氷河時代-』
- 小野 昭
考古フォーカス
- 新潟県 国指定史跡 沖ノ原遺跡の第1号住居跡と調査について
- 佐藤信之
- ミャンマー シャン高原西部 タムティム遺跡
- ティン・トゥッ・アウン(新納泉訳)
考古学研究会第64回総会・研究集会報告
全国委員つうしん・会員つうしん