<考古学研究会事務局>
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会誌『考古学研究』
目次
第65巻 第4号(通巻260号)
2019年3月
展望
- 文化財保護業務の課題と展望
- 鈴木一有
- アートと考古学の眼差しで見るコミュニティの記憶―福島にて
- 安芸早穂子
- 縄文時代開始暦年代と草創期の環境─土器の起源と縄文時代開始の実態─
- 竹広文明
- 仁徳陵古墳(大仙陵古墳)内堤(第1堤)の宮内庁書陵部陵墓保全整備工事事前調査の見学
- 一瀬和夫
考古学研究会第65回総会講演要旨
- 縄文時代の土器生産と権威の発生―氏族社会の民族誌から見た土器型式の成立と流通―
- 高橋龍三郎
考古学研究会第65回総会・研究集会要旨
- 趣旨説明「権力とは何か―生産と流通から考える―」
- 高田健一・冨井 眞
- 縄文社会の複雑化と生業活動―関東地方東部地域における資源利用史研究の事例―
- 阿部芳郎
- 弥生時代青銅器の生産と流通から捉えた権力
- 田尻義了
- 日本古代の銅生産と流通―長登銅山跡出土木簡の検討から―
- 竹内 亮
- 埴輪の生産・流通からみた古墳時代の権力生成
- 廣瀬 覚
- 事例報告要旨「八日市地方遺跡の生産活動と確認調査を通じた理解」
- 鶴来航介・下濱貴子
論文
- 表出圧痕は圧痕全体を代表するのか―佐賀県嘉瀬川ダム関連縄文遺跡の潜在圧痕調査の成果から―
- 小畑弘己
要旨 2005年ごろより盛んになってきた土器圧痕の悉皆調査は,縄文時代のダイズ・アズキの発見や貯蔵堅果類の害虫であるコクゾウムシの発見をもたらし,さらにはイネ・アワなどの大陸系穀物(朝鮮半島・中国大陸から伝播した穀物)の伝播時期と拡散の様相の把握,弥生時代の栽培植物の地域性の探求などの研究を支えてきた。これはそれまで炭化・未炭化種実のみで語られてきた縄文時代~弥生時代の植物利用や植物栽培に新たな資料を加えただけでなく,コンタミネーションのない確実な資料として既存学説の検証・再評価に大きな役割を果たした。しかし,最近,圧痕研究とその調査事例が増加するにつれ,新たな問題が浮上してきた。それは「潜在圧痕」の問題である。この土器器壁内に隠れた種実や昆虫の痕跡は,表出圧痕のバックグランドともいうべきもので,表出圧痕はその一部にすぎない。今,私たちにつきつけられている「表出圧痕は圧痕全体をどれほど反映しているのか」,この問いは圧痕資料の定性的・定量的評価において避けて通れない重要な課題である。本論は,その問いに答えるために,佐賀県の嘉瀬川ダム関連調査遺跡の出土資料を素材にX線機器を用いて検証を行った結果であり,新たな圧痕検出法の提言でもある。
キーワード 潜在圧痕,X線,栽培植物,縄文土器
研究ノート
- 縄文時代における洞穴遺跡数の推移
- 山田侑生
要旨 本論では,日本列島の主として山間部における縄文時代の洞穴遺跡数の推移を提示し,これを地域毎に開地遺跡や住居址数の推移と比較した。
その結果,1000年間あたりの洞穴遺跡数は,いずれの地域においても早期以前は低調で,前期以降に増加し,特に中部高地~西日本にかけては洞穴遺跡数の増加ピークと住居址数の増加ピークが一致する傾向を見出した。
この背景として,個々の洞穴遺跡を俯瞰しながら,前期以降に洞穴遺跡の利用形態に変化が生じ始めた可能性を指摘した。
キーワード 縄文時代,洞穴,岩陰,遺跡数,利用形態
- マリアナ諸島における網代圧痕土器の予察的研究
- 島﨑達也
要旨 マリアナ諸島の後期プレ・ラッテ期(約2,500〜1,500年前)は,大型の平鍋形土器が新たに出現するなど土器組成が大きく変化した時期であり,一部の土器には編物の押圧痕である網代圧痕が認められる。マリアナ諸島の土器研究において,網代圧痕は時間的指標になる属性と認識されているものの,出現する器種や部位については報告が不十分であり,出土状況も全諸島規模で検討されてこなかった。土器編年における網代圧痕土器の位置付けを明確化するための基礎的な作業として出土例の集成を試みたところ,グアム島など4島で報告例を確認できた。資料調査の結果,平鍋形土器や薄手土器の底部外面に網代圧痕が認められることが確認できたため,網代圧痕は複数の器種に生じる属性であることが明らかとなった。
キーワード マリアナ諸島,グアム,後期プレ・ラッテ期,先ラッテ期,網代圧痕
書評
- 辻田淳一郎著『同型鏡と倭の五王の時代』
- 北條芳隆
- 吉田惠二著『文房具が語る古代東アジア』
- 三好美穂
新刊紹介
- 新井悟編著『古鏡のひみつ―「鏡の裏の世界」をさぐる―』
- 馬渕一輝
- 近江俊秀著『入門 歴史時代の考古学』
- 高橋照彦
考古フォーカス
- 愛知県 保美貝塚(B貝塚)における人骨集積遺構の調査
- 山田康弘
- インド カディリラヤチェルヴ遺跡
- 上杉彰紀
全国委員つうしん