<考古学研究会事務局>
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会誌『考古学研究』
目次
第66巻 第4号(通巻264号)
2020年3月
展望
- 考古学教育と埋蔵文化財保護行政における人材確保の在り方について
- 森先一貴
- 第51回考古学研究会東京例会 特集「古墳時代前期前半の東日本を考える」参加記
- 稲田健一
- 「平成28年熊本地震復興に係わる文化財・埋蔵文化財調査の成果報告会」に参加して
- 新里亮人
- 「陵墓限定公開」40周年記念シンポジウム「文化財としての『陵墓』と世界遺産」参加記
- 上田直弥
- トランプ米国大統領のツイート発言を憂う
- 常任委員会
考古学研究会第66回総会・研究集会
- 講演要旨 資源・水利・農業と政治統治―中国・良渚文化の事例から―
- 中村慎一
- 趣旨説明 権力とは何か―集団とインフラの検討から―
- 高瀬克範・光本 順
- 報告要旨 狩猟採集社会における有力者の権能―北海道島の事例―
- 高瀬克範
- 報告要旨 植物資源利用から見た縄文時代の生活基盤の整備
- 佐々木由香
- 報告要旨 水利開発と地域権力―5~7世紀の出雲を素材として―
- 池淵俊一
- 報告要旨 古代道路の象徴性
- 近江俊秀
考古学研究会第65回研究集会報告(下)
- 日本古代の銅生産と流通
- 竹内 亮
要旨 長登銅山跡出土木簡からみた官営採銅事業の検討を通じ,①銅の私的流通,②産銅地における民間銅生産の推移という2つの観点から,銅生産における官民関係について論じた。
①については,鋳銭料銅供給のため官採制を導入して設けられた官営銅山で集中稼働による生産余力が生じた結果,貴族などが私的需要により官営銅山から銅を購入することが可能であったと述べた。
②については,銅生産技術者が官営銅山へ徴発された結果,一部の産銅地での民間銅生産が途絶えるという影響が出た一方で,官民交流により民間銅生産技術者の活動は活発化した可能性を指摘した。
以上から,古代の銅生産は資源面でも人材面でも官民の共存を前提として成り立っていたと結論した。
キーワード 木簡,長登銅山,鋳銭司,官営銅山,官採制
論文
- 加曽利B式土器の再評価―縄文時代後期中葉の日本列島における地域間関係の変動―
- 福永将大
要旨 縄文時代後期は広域土器分布現象が見られ,関東系土器群の影響が西日本にまで及ぶことが指摘されている。しかし,後期中葉になると,西日本で関東系土器群が出土しなくなることから,東日本-西日本両地域間における集団間交流の様相が変化したことが推察される。
そうした交流の変化の実態を明らかにするために,本稿では,関東所在の遺跡から出土した加曽利B式土器を分析対象として,分類・編年研究や分布状況の検討を行った。
その結果,東北-関東両地域の集団間交流の活発化が生じていることを確認し,こうした東日本における地域間関係の変化が,東日本-西日本両地域間における集団間交流の様相にも影響を及ぼした可能性を指摘した。
キーワード 土器,属性分析,地域間関係,縄文時代後期中葉,日本列島
- 弥生時代における低地集落と高地性集落―石鏃からみた明石川流域の小地域様相―
- 園原悠斗
要旨 弥生時代における高地性集落は,水田経営の困難な立地環境での集落形成という特殊性や形成時期が極めて限定的であることなどから,多くの研究者によって検討がおこなわれてきた。しかしその研究視点と見解は,特殊性を前提とした低地集落からの派生的存在として,軍事的・防御的施設や海上監視と捉えられている。本論において,石鏃を中心としたサヌカイト石器を用いて小地域内の低地集落と高地性集落の比較検討をおこなったところ,明石川流域においてはサヌカイト石器生産と流通の交易ルートが高地と低地で明確に異なることが判明した。また石鏃形態と製作技法についても,同様にどの地域の影響を受けているかは集落を形成する立地によって異なることを指摘した。総合的に判断すると,明石川流域の高地性集落は独立した交易ネットワークを保有する一般集落であることが判明した。
キーワード 弥生時代,高地性集落,石鏃,石器組成,明石川流域
- 垂下口縁壺B類について―周防における弥生時代中期後半の土器様相と社会的背景―
- 田畑直彦
要旨 弥生時代中期後半に,周防を中心に伊予中部にかけて垂下口縁壺B類が分布する。この壺は垂下させた口縁部外面に山形文を施文し,頸部・胴部に貼付突帯を持つことなどを特徴とし,須玖Ⅰ式新段階~須玖Ⅱ式古段階に併行する凹線文系土器出現期に,須玖式土器や伊予東部を中心とする瀬戸内の土器の影響により成立する。以後,中期末に周防西部では須玖式土器が卓越する一方,周防東部では凹線文系土器がみられることから,北部九州・西部瀬戸内の影響を受けて,その分布圏が解体しつつあったことが判明した。また,その一因として,周防では中期末に小規模集落しか存在せず,北部九州・伊予中部地域と比較して生産力の差が生じたことを想定した。
キーワード 弥生時代中期後半,周防,垂下口縁壺B類,須玖式土器,凹線文系土器
書評
- 禰冝田佳男著『農耕文化の形成と近畿弥生社会』
- 菅榮太郎
- 大庭康時著『博多の考古学―中世の貿易都市を掘る―』
- 柴田圭子
新刊紹介
- 南健太郎著『東アジアの銅鏡と弥生社会』
- 新井 悟
- 高田貫太著『「異形」の古墳―朝鮮半島の前方後円墳―』
- 山本孝文
考古フォーカス
- 鹿児島県 中岳山麓窯跡群
- 中村直子
- グアテマラ共和国 ラ・コロナ遺跡の石板56
- トマス・バリエントス 鈴木真太郎
自然災害と文化財
- 台風19号に伴う長野県千曲川中流域の文化財被害と考古学の仲間の被災
- 矢島宏雄
- 阪神・淡路大震災,あの日から25年
- 森岡秀人
委員会つうしん
- デジタル化に向けての「方針」と「指針」および今後の課題
- 岡山例会第22回シンポジウム報告
会員つうしん