<考古学研究会事務局>
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会誌『考古学研究』
目次
第67巻 第1号(通巻265号)
2020年6月
会告
たより
展望
- 【連載】模擬古墳―遺跡・遺物の保存と活用を考えるための実験的取り組み―
- 文化財と SDGs の接点―スーダン国立博物館所蔵鉄製品の資料調査から―
- 関広尚世
- 能褒野古墳群・行燈山古墳外堤・佐紀石塚山古墳の立会調査見学参加記
- 中久保辰夫・三好元樹・清野孝之
- 岡山の「建国記念の日」を考える県民のつどい
- 古市秀治
論文
- 古墳時代中期における王権中枢古墳群の埴輪生産
- 木村 理
要旨 古墳時代中期における古市古墳群,百舌鳥古墳群,佐紀古墳群,馬見古墳群といった王権中枢古墳群では,大型前方後円墳を核とした拠点的な埴輪生産が実施されているという見方が一般的であった。
そういった中で,王権中枢古墳群それぞれに近接して分析した結果,①中期前~中葉にかけては大型前方後円墳を中心とした拠点的生産が行われることを確認しつつも,中期後葉~末においてはむしろ個別的な生産が実施される傾向にあるという時期的推移が見て取れること,②中期前葉では百舌鳥・古市古墳群というより,古市古墳群と佐紀古墳群で拠点的生産や埴輪様式の整備が進められるといったように,古墳群ごとに不均質さが認められることを明らかにした。
キーワード 古市古墳群,百舌鳥古墳群,佐紀古墳群,馬見古墳群,埴輪生産
- 小林行雄「きしゃと民家」を読む
- 春成秀爾
要旨 昭和初期に小林行雄が発表した「きしゃと民家」は,播磨から備前までの山陽線沿いの民家の屋根を汽車の窓から観察して地域的変移を扱った随筆である。当時,小林は北九州から近畿への遠賀川系土器東漸の問題を追究しており,民家への関心と遠賀川系土器の研究は,考古学の方法を模索する1人の研究者の頭の深部で結びついていた。その方法は,後年,三角縁神獣鏡の同笵関係および石製腕飾りの分析にもとづく論文「初期大和政権の勢力圏」として結実した。
キーワード 考古学史,小林行雄,民家,遠賀川系土器,伝播変移
研究ノート
- 縄文時代前期前葉における岩偶の遺跡間変化とその要因―宮城県内の事例を中心に―
- 傳田惠隆
要旨 本稿では,宮城県石巻市中沢遺跡,大崎市東要害貝塚の岩偶と名取市泉遺跡の土偶について,形態と文様の分類をおこない,さらに形状を定量的に把握し,それらの傾向性を検討した。その結果,中沢遺跡内では,共通する形態的特徴を有する岩偶でも,輪郭形状に違いがみられ,それらの装飾類型が異なることが明らかになった。また,遺跡間関係では,岩偶と土偶の間に装飾類型,輪郭形状,厚さにおいて共通性があるものの存在も明らかになった。ただし,詳細にみるとその中でも岩偶では,遺跡間で輪郭形状に違いがみられたのに対して,土偶では輪郭形状に強い共通性がみられた。その要因は,石材と粘土という素材の違いによる可能性がある。
キーワード 岩偶,土偶,形態分類,文様,輪郭形状
- 考古遺物から見た弥生時代の天秤―中尾智行氏の論文を手がかりに―
- 葉山茂英
要旨 中尾智行氏の論文「弥生時代の計量技術―畿内の天秤権―」は,森本晋氏の「弥生分銅」の発見以降,畿内から同種の分銅を新たに探索し,これらの分銅群の諸問題を論じたものである。しかし数値処理に問題があり,また,その所説には筆者の考えと異なる見解が見られる。本稿では中尾氏の論文を手がかりにして,基準質量,単位体系,天秤権製作用天秤,計量の目的,亀井分銅に関する問題などを筆者の視点を交えて検討し,弥生時代の天秤に対する試案を提示した。
キーワード 天秤,分銅,基準質量,単位体系,計量目的
書評
- 南健太郎著『東アジアの銅鏡と弥生社会』
- 實盛良彦
- 辻田淳一郎著『鏡の古代史』
- 石村 智
- 青山和夫ほか編『古代アメリカの比較文明論―メソアメリカとアンデスの過去から現代まで―』
- 鈴木真太郎
新刊紹介
- 右島和夫監修・青柳泰介ほか編『馬の考古学』
- 田中由理
- 嘉幡 茂著『図説 マヤ文明』
- 市川 彰
考古フォーカス
- ベトナム ハイフォン市 古寺山大型漢墓の調査と認識
- 黄 暁 芬
- 広島市 名勝平和記念公園内遺跡 広島平和記念資料館本館下地点の発掘調査
- 桾木敬太