<考古学研究会事務局>
〒700-0027
岡山県岡山市北区清心町16-37長井ビル201
TEL・FAX 086-255-7840
会誌『考古学研究』
目次
第67巻 第3号(通巻267号)
2020年12月
展望
- 日本学術会議会員任命拒否をめぐって
- 常任委員会
- 八日市地方遺跡発見90周年記念フォーラム「大規模環濠集落 八日市地方遺跡の存在意義とは」
WEB参加記
- 田中 謙
- 【連載】模擬古墳―遺跡・遺物の保存と活用を考えるための実験的取り組み―
論文
- 洞穴遺跡と打製石鏃の小型化
- 山田侑生
要旨 本論では,山間部における縄文時代の洞穴遺跡について,現状において利用可能な資料と方法論を精査したうえで打製石鏃を分析対象として選び,同時期同地域の開地遺跡から出土した打製石鏃と統計的な比較を行った。
その結果,早期~晩期の洞穴遺跡では,通時的に打製石鏃が小さい傾向にあることが明らかとなった。打製石鏃のサイズに影響を与える要因は多様だが,サンプルサイズがまとまっている西日本について検討すると,その1つとして「再生加工の頻度の高さによる小型化」が想定され,石材の供給量が間接的に影響した結果と考えられた。また後期以降になると「平面形態の変化の受容度」が新たな要素として加わることや,この時期に洞穴遺跡数が増加することなどから,人口の増加や集団の分散,低地の開発といった社会変化を背景に,開地遺跡を生活の根拠地とした「戦略的な洞穴利用」が増加したと考えた。
キーワード 縄文時代,洞穴,洞窟,岩陰,打製石鏃
- 弥生時代の東日本出土鉄製武器にみる鉄器製作技術
- 鈴木崇司
要旨 本稿では,弥生時代の東日本における鉄器製作技術について,特異な関部形態を呈した鉄剣と製作技法の異なる鉄鏃に注目し,実見に基づいた分析を行った。その結果,東日本にて独自の把に対応させるために再加工された鉄剣や薄手鉄鏃を確認でき,6㎜以下の厚さを裁断する技術や3㎜以下の鉄を鍛延する技術を有していたと解釈した。そして,これらの技術を駆使して,再加工の際に生じた鉄片を転用する節約志向の強い鉄器製作サイクルが存在したと推察した。一方,特注品や鉄剣副葬の充実から,節約を強いられる供給体制とは異なる製品入手を可能とした交流網を想定でき,この二面性を読み解くことが東日本弥生社会を復元するうえで重要となる。
キーワード 弥生時代,東日本,鉄器製作技術,鉄剣,鉄鏃
- 常総地域の箱式石棺からみた古墳時代後半期の埋葬行為
- 荒井啓汰
要旨 本論では,常総地域の箱式石棺を素材として,古墳時代後半期の埋葬行為がどのように変化したかについて具体的なデータに基づきながら明らかにした。箱式石棺における各要素を,生者の「埋葬行為」として理解し,これらの時期的傾向を明らかにすることで埋葬行為の変遷を論じた。その結果,①生者と死者の位置関係をふまえた埋葬規範が認められること,②7世紀にかけてしだいに石棺内部で行動可能な石棺が増加すること,③その直接的な背景には,追葬などの二次的な利用に際して,生者が石棺内部に入り先葬者の人骨を移動・再配置する行為が想定されること,などを指摘した。
キーワード 箱式石棺,常総地域,古墳時代後半期,埋葬行為,埋葬規範
書評
- 池谷和信 編『ビーズでたどるホモ・サピエンス史―美の起源に迫る―』
- 北條芳隆
- 谷澤亜里 著『玉からみた古墳時代の開始と社会変革』
- 小寺智津子
- 岸本直文 著『倭王権と前方後円墳』
- 新納 泉
考古フォーカス
- 岡山県津山市 桑山古墳群の発掘調査
- 岡山県古代吉備文化財センター
- 島根県出雲市 京田遺跡の調査
- 幡中光輔
たより
- まもなく開催、愛知県陶磁美術館「陶邑窯」展
- 大西 遼・井上隼多
委員会つうしん・全国委員つうしん