<考古学研究会事務局>
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会誌『考古学研究』
目次
第67巻 第4号(通巻268号)
2021年3月
展望
- コロナ禍対策の1年―常任委員会の活動から―
- 常任委員会
- 日本学術会議会員任命拒否をめぐって 第2報
- 常任委員会
- 常任委員会の声明にたいして―日本学術会議会員任命拒否をめぐって―
- 菊池誠一
- 奈良県ウワナベ古墳(宇和奈辺陵墓参考地)限定公開参加記
- 中久保辰夫
論文
- 縄文時代後晩期におけるニホンジカの利用とその時期差―仙台湾から三陸沿岸を中心に―
- 山田凜太郎
要旨 本稿では,宮城県域に所在する里浜貝塚,田柄貝塚,中沢目貝塚の分析を通して,縄文時代後晩期におけるニホンジカの利用とその時期差について検討を行った。分析の結果,里浜貝塚では後晩期を通じて骨角器やその素材となる部位が多く,晩期に量や種類が増加した。中沢目貝塚では骨角器やその素材となる部位が少なかった。地域的な結びつきも考慮するに,中沢目貝塚の立地する内陸部から里浜貝塚の立地する仙台湾周辺へ骨角器素材が供給されていたと考えられる。また里浜貝塚で晩期に骨角器やその素材が増加するのは,内陸部集落数が増加したことで,供給される骨角器素材も増加したことが要因である可能性がある。
キーワード 縄文時代,東北地方,ニホンジカ,交易,貝塚
研究ノート
- 大珠分割に見る「糸切技術」
- 栗島義明
要旨 ヒスイやコハクを石材として用いた大珠は,縄文時代中期段階で東日本地域に広範な分布圏を形成することが知られている。副葬品として墓壙内から完成品の状態で出土する傾向の顕著な大珠のなかには,少数であるが明確な分割資料が存在する。分割された資料を検討すると,石製擦切具の使用痕跡を示す資料と共に,明らかに軟質の素材を用いて分割した痕跡を残す資料が存在することが確認され,擦切痕の形状や線状痕などからコハクばかりか硬質のヒスイ製大珠にも「糸切技術」を用いた分割を認めることができる。石材や大珠形態の差異をこえた分割は等分割を基本としており,貴重な装身具であった社会的財とも言うべき大珠を同形態,同法量として分かち合うことを目的として糸切技術が採用されていた可能性を指摘した。
キーワード 大珠,ヒスイ,コハク,糸切,等分割
- 無文土器・弥生土器の変容過程について
- 山崎頼人
要旨 日本では,「朝鮮系無文土器」,「擬朝鮮系無文土器」といった名称で示されてきた無文土器と,弥生土器と無文土器が接触して変容した土器があり,これまで無文土器の弥生土器化を中心に検討されてきた。しかし,甕を中心に分析した結果,日本では,無文土器が弥生土器の影響を受けて変容する方向だけでなく,弥生土器も無文土器の影響を受けて変容することがわかり,韓半島でも同様に,弥生土器が無文土器の影響を受けるだけでなく,無文土器が弥生土器の影響も受けていることが明らかとなった。
今後の日韓交流研究の進展のためにも,用語の厳密な区別を用いて,弥生土器と無文土器の「系統」での理解を提言する。
キーワード 日韓交流,変容過程,無文土器系土器,弥生系土器
- メソアメリカの農耕定住と社会の複雑化
- 青山和夫
要旨 本論は,メソアメリカの農耕定住と社会の複雑化に関する試論である。まずメソアメリカ文明と先土器時代の古期の初期農耕,さらに土器,トウモロコシ農耕定住と社会の複雑化について論説する。次にトウモロコシがいつから主食穀物になったのかについて,ケネットら(Kennett et al. 2017・2020)の最近の論文を批判的に読み解く。ベリーズ北部の古期の諸遺跡,グアテマラのセイバル遺跡やメキシコのアグアダ・フェニックス遺跡等のマヤ低地における新たな考古学調査によって,これまでよくわかっていない先土器時代の古期からどのように社会が複雑化したのか,文明の起源・形成プロセスに関してメソアメリカだけでなく人類史の重要テーマに有益な情報を生み出すことができる。
キーワード メソアメリカ,土器,トウモロコシ農耕定住,社会の複雑化
- エジプト・ナカダ文化の波状把手付壺の地域相と系統分化
- 竹野内恵太
要旨 本論は,波状把手付壺系統の地域的動態を考察することで,従来自明視されてきた波状把手付壺から円筒形壺という単系的な変化を解体した。それにより,ナカダⅡD2-ⅢA1期ごろに下エジプト地域で円筒形壺とは異なる長胴壺へ向かう系統が発生したことを指摘した。さらに同地域ではⅢA2期に上エジプト地域とは異なる文様もまた生み出された。このことから,ⅡD-ⅢA期にかけて上下エジプトの発達した地域間関係の下で下エジプト地域に波状把手付壺の生産地が拡大した可能性が高い。
キーワード 初期国家形成,波状把手付壺,系統関係,在地生産
書評
- 丸山浩治 著『火山灰考古学と古代社会―十和田噴火と蝦夷・律令国家―』
- 桒畑光博
- 岡寺 良 著『戦国期北部九州の城郭構造』
- 中井 均
新刊紹介
- 斎藤成也 編著『最新DNA研究が解き明かす。日本人の誕生』
- 舟橋京子
- 岩本 崇 著『三角縁神獣鏡と古墳時代の社会』
- 村瀨 陸
考古フォーカス
- グアテマラ共和国 ペテン県 サン・バルトロ遺跡の祭祀建築
- ボリス・ベルトラン(鈴木真太郎 訳)
- スペイン アンダルシア州コルドバ県カブラ市 ラ・ベレーニャ埋葬地
- マリア・ドローレス・カマリチ・マッシエウ他(鈴木真太郎 訳)
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