考古学研究会
<考古学研究会事務局>
〒700-0027
岡山県岡山市北区清心町16-37長井ビル201
TEL・FAX 086-255-7840
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会誌『考古学研究』
目次
第69巻 第3号(通巻275号)
2022年12月
展望
- 埋蔵文化財専門職員の退職・採用状況にかんするアンケート結果(速報)
- 企画・総務委員会
- 田中琢さんと『考古学研究』
- 春成秀爾
考古学研究会第68回総会・研究集会報告(下)
- 縄文時代にモノの継承はあるのか
- 長田友也
要旨 本報告では,縄文時代の考古事象全体をモノと総称し,その「継承」の存否について検討した。遺物では装身具・儀器の時期差となる異型式間での共伴事例を取り上げ,その多くが転用に相当し事象の「継承」には該当しない点を指摘した。遺構では竪穴住居や墓・配石遺構の重複事例を取り上げ,時間幅の短い事例では「継承」の可能性が指摘されるものの,使用・構築期間の長い遺構では,「遺構更新」を例に空間占有などの「継承」の想定が難しいとした。また,縄文時代から弥生時代への「継承」を例に,文化的な継続が認められる事象に対し,系統性を明示したうえで「継承」の是非を示す必要性を指摘した。以上のことから,縄文時代においてはモノの継承は想定しにくいと評価した。キーワード 玦状耳飾,石棒,竪穴住居,配石遺構,遺構更新
- 殷周青銅器における伝世・復古とその史的意義
- 山本 堯
要旨 「宗廟の常器」とされる殷周時代の青銅彝器は,製作当初から伝世が想定されている特殊な性格の器物だが,そのライフヒストリーは多様性に満ちており,そこには当時の大きな社会変化が反映されている。周初では王朝から各地の諸侯に伝世器の分配がおこなわれたが,その授受に特別な意味づけを見出すことはできない。しかし,西周後半期に入ると系譜観が重視されるようになり,伝世器がその生成のうえで重要な役割を果たすようになる。さらに東周期では復古調の青銅彝器が流行し,貴族間の贈与交換によって伝世したことが推測される器もあらわれる。それは王権の不安定な時代に,「レガリア」としての役割が求められたことと関連した現象であった。キーワード 殷周時代,青銅彝器,伝世,復古,贈与交換
論文
- 古墳時代前期の積石塚古墳における墳丘石材採取の具体的様相―考古学と地球科学の学際融合研究の一例―
- 梶原慎司・小山内康人・中野伸彦・足立達朗
要旨 古墳時代前期における四国北東部では,墳丘を石材で構築する積石塚古墳が分布する。本稿では,積石塚古墳の墳丘構築石材の採取場所を明らかにし,古墳がどのように構築されたのかを解明するために岩石学的分析を行った。分析は,偏光顕微鏡による薄片観察,ポイントカウンターによる鉱物モード組成分析,XRFおよびICP-MSによる全岩化学組成の測定,EPMAによる鉱物化学組成の測定を行った。その結果,古墳を構築する塊状石材は各古墳の周辺で採取されたことが明らかになった。また,装飾材として利用される板状石材は塊状石材と採取状況が異なり,板状節理が顕著な岩体から採取されたことが明らかになった。キーワード 積石塚古墳,産地同定分析,学際融合研究,四国北東部
- 須恵器杯への新技術の導入とその背景―平安時代の東北地方における製作者間の交流―
- 舘内魁生
要旨 平安時代には,金属器や中国産陶磁器を模倣した新しい形の食器が出現する。東北地方では須恵器などで器形が変化したが,同時に施釉陶器の成形具であるコテ状工具が導入された。本研究は東北地方におけるコテ状工具の分布と導入過程を,製作者間の交流に注目して解明する。まず,製作実験により痕跡と工具の関係を示し,これを基準に各地の資料を検討した。結果,コテ状工具は陸奥国を中心に導入されており,陸奥国内での製作者の交流や,国府周辺における貞観地震の復興との関連を指摘した。また,各地域の土器生産体制や技術伝習の違いによって,多様な導入の在り方が生じたとした。最後に,西日本との比較から列島規模の変化を議論した。キーワード 東北地方,製作技術,貞観地震,地域間交流,3次元計測
研究ノート
- 弥生・古墳時代の墳墓に持ち込まれた朱の生産具
- 西本和哉
要旨 弥生時代後期から古墳時代中期の墳墓で出土する石杵と石臼は,葬送用の朱のすり潰しや葬送儀礼に使用されたとする見解が提示されてきたが,その妥当性を検証する研究は少ない。そこで本稿では,朱の生産具が墳墓に持ち込まれた背景を再考するための基礎作業として,石杵と石臼の通時的な展開を整理した。その結果,弥生時代には多様な形態の石杵や石臼を墓域に供献する行為がみられるが,古墳時代になり規格性の高い整形品が現れると,次第に副葬品として墓壙に納める傾向が見受けられた。また,悉皆的な使用痕分析を行い,模造品を除く全ての資料が一定期間使用された実用品であることを明らかにした。キーワード 弥生・古墳時代,墳墓,葬送,朱,石杵・石臼
書評
- 高瀬克範 著『続縄文文化の資源利用』
- 青野友哉
- 飯塚武司 著『木工の考古学』
- 中原 計
- 下垣仁志 著『鏡の古墳時代』
- 石村 智
- 佐藤亜聖 著『中世都市奈良の考古学的研究』
- 中井淳史
新刊紹介
- 富岡直人 著『入門 欧米考古学』
- 市川 彰
考古フォーカス
- 韓国ソウル特別市 石村洞古墳群の発掘調査
- 鄭 治 泳(ソウル特別市立 漢城百濟博物館,李スルチョロン 訳)
- 大阪府藤井寺市 津堂遺跡の発掘調査
- 大阪府教育庁文化財保護課
委員会つうしん
全国委員つうしん