<考古学研究会事務局>
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会誌『考古学研究』
目次
第69巻 第4号(通巻276号)
2023年3月
会告
展望
- 日本学術会議のあり方をめぐって
- 常任委員会
- 日本学術会議公開シンポジウム『文化財保護に未来はあるか―日本の文化財のこれからを考える―』を視聴して
- 髙田健一
- 埋蔵文化財専門職員の退職・採用状況にかんするアンケート結果(続報)
- 企画・総務委員会
- 御廟野古墳,渋谷向山古墳外堤の立会調査見学および叡福寺北古墳の限定公開参加記
- 中久保辰夫
- 【連載】現代社会と考古学③
考古学研究会第69回総会・研究集会
- 趣旨説明 モノの継承と転換は何を意味するのか―分布圏を考える―
- 宮里 修
- 講演要旨 弥生時代における広域分布土器型式の形成と展開
- 石川日出志
- 報告要旨 細石刃石器群にみる広域分布現象とその背景
- 髙倉 純
- 報告要旨 縄文時代後期広域土器分布現象とその背景―後期中葉を中心に―
- 福永将大
- 報告要旨 古墳時代須恵器の分布域の形成過程と型式変化の連動性
- 松永悦枝
- 報告要旨 骨角製漁具の伝播と受容
- 高橋 健
論文
- 石器石材に利用された層状チャートの可視属性に基づく原産地推定法の提案
- 髙木康裕
要旨 ジュラ紀付加体の構成岩である層状チャートは,先史時代の日本列島で多用された石器石材の一つであるが,有効な原産地推定法が確立しておらず,その獲得行動の詳細が不明である。そこで本稿は,福井県嶺南地方(丹波帯北部)での採取試料と鳥浜貝塚の出土資料を題材とし,チャートの諸属性のうちまずは可視属性に基づく原産地推定法の開発を試みた。脈の密度,石英の粒度,色調の各属性の値は多様で地理的に偏在し,前二者の値が小さいチャートは産出量・分布域ともに限られるが,縄文人はそれらを選択的に利用していることが判明した。結論として,脈の密度と石英の粒度の観察を組み合わせて試料と資料を類型化し,マンセル値が共通する試料と資料の間で類型を比較することが,チャートの原産地推定に有効であると考えられる。
キーワード 層状チャート,ジュラ紀付加体,石器石材,原産地,縄文時代
- 古墳時代における櫛の使用法について
- 大熊久貴
要旨 古墳時代の女性は髷を留めるために,櫛を頭部に挿していたことが,人物埴輪から推定されている。ただし,人物埴輪に表現された櫛の形態にバリエーションがありながら,実際の櫛との対応関係についての研究は希薄であった。そこで,遺跡から出土する櫛と埴輪に表現された櫛とを比較検討し,あわせて横櫛の規格から,櫛の使用法について考察した。その結果,6世紀後半頃まで頭部に竪櫛を挿していたのに対し,西日本では5世紀後半頃から,関東地方では6世紀後半頃から横櫛を挿しはじめ,7世紀以降は竪櫛に代わって横櫛が主流になっていくことが明らかとなった。さらに竪櫛よりも横櫛を挿すことが,階層が上位の者に許された風俗であった。
キーワード 古墳時代,櫛,人物埴輪,風俗,髪型
- 中期大型前方後円墳の周辺集落と地域開発―摂津・安威川流域の分析から―
- 笹栗 拓
要旨 摂津最大の太田茶臼山古墳が所在する安威川流域を対象に,主要集落の構造を復元し,集落ごとの建物構造や土器組成を検討した。その結果,古墳時代中期初頭以降,渡来系集団を含む移住集団が主体となって扇頂部を起点に流域一帯の耕地開発が進められたことを指摘した。さらに通時的な集落と古墳の動態分析から,集落や開発動向と連動して古墳が築造されたことと,開発領域が徐々に高所部へと拡大されたことを明らかにした。太田茶臼山古墳の備える属性や『日本書紀』の「竹村屯倉」の記事などをふまえれば,この地域の開発に王権からの直接的な関与が推測でき,本稿で示した内容が古墳時代中期における地域開発のモデルとなりうる可能性があることを論じた。
キーワード 集落,開発,地形環境,土地利用,集団
研究ノート
- 押型文終焉期における土器研究の課題
- 守屋豊人
要旨 本論の目的は,押型文土器の終焉過程における土器研究の課題を示すことである。縄文早期に押型文手法が終焉する時期では,中部地方から九州地方に広がる遺跡の分布が明らかとなる一方で,沈線文土器出土の遺跡が関東地方から東北地方にかけて分布するととらえられている。当該時期の土器研究では,近年に類例が増加することによって研究が進展し,相異なる見解からの土器型式の変遷観が示され,対峙している。大枠でとらえられる二者間に存在する齟齬は,当該時期の研究をさらに発展させる鍵と考え,本稿で説明する。
キーワード 押型文土器,押型文終焉期,主要分布域,研究史,課題点
書評
- 上田直弥 著『古墳時代の葬制秩序と政治権力』
- 北山峰生
- 三次市教育委員会 編『史跡寺町廃寺跡―推定三谷寺跡 第1~8次発掘調査総括報告書―』
- 妹尾周三
新刊紹介
考古フォーカス
- 熊本県葦北郡芦北町 国指定史跡 佐敷城跡
- 深川裕二・岡寺 良
- 岡山県総社市 こうもり塚古墳の発掘調査
- 岡山県古代吉備文化財センター
会員つうしん