考古学研究会
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会誌『考古学研究』
目次
第70巻 第2号(通巻278号)
2023年9月
考古学研究会第69回総会・研究集会報告(上)
- 縄文時代後期広域土器分布現象とその背景―後期中葉を中心に―
- 福永将大
要旨 本研究は,縄文時代後期中葉を分析対象として,縄文時代後期を特徴づける東西日本にわたる広域土器分布現象について再検討し,その背後にある人・モノ・情報の移動の実態について考察するものである。
関東以西における土器の時空間的動態の把握や,関東系土器の西漸現象について精査した結果,婚姻関係などによる土器製作者の移動によって広域土器分布現象が生じた,という従来考えられてきた図式では説明しがたい現象を確認した。その上で,今後,広域土器分布現象の背景に想定される複雑な集団関係や社会関係を追求していくためにも,シンボルの能動的役割や集団のアイデンティティの問題なども考慮に入れた議論が必要であることを論じた。キーワード 縄文時代後期,東西日本,広域土器分布現象,縄文土器,器種
- 骨角製漁具の伝播と受容―漁具の分布をどう解釈するか―
- 高橋 健
要旨 東日本における縄文晩期と続縄文・弥生文化の骨角製漁具(銛頭,釣針,大型へら)の分布の変化を検討し,遺跡出土の動物遺体から銛頭と釣針の使用対象を推測した。縄文晩期における漁具の分布には地域性が強くみられたのに対して,続縄文・弥生文化では他地域の技術を積極的に採り入れたり,それらを組み合わせて新たな形の道具を作り出したりするようになった。こうした変化は必ずしも獲物の変化とは対応していないので実用的・機能的側面からだけでは説明できず,新技術を採用すること自体が社会的な意味を持っていた可能性がある。キーワード 骨角器,漁具,続縄文・弥生,分布,伝播
論文
- 『日本書紀』神功紀の再検討
- 新納 泉
要旨 『日本書紀』神功紀の紀年を再検討するため,書紀そのものの内容に即した客観的な読解を試みた。神功紀は,明治時代以降,日清,日露,および太平洋戦争の過程で,解釈の歪みが拡大していった。戦後になって,その解釈は一変し,朝鮮半島南部への軍事侵攻という記事は,編者らの造作として否定された。しかし,さまざまな解釈の歪みを正すならば,百済の求めに応じて倭が軍事支援を行ったという理解の可能性があると考えた。また,その軍事支援の記事こそ,『日本書紀』の紀年における年代の定点となることや,七支刀が軍事支援に対する褒賞としてもたらされたこと,神功皇后と卑弥呼が同一視されていたわけではないことなどを指摘した。キーワード 日本書紀,神功紀,紀年,百済,七支刀
- 変形忍冬唐草文軒平瓦6647C・Fに関する基礎的考察
- 新尺雅弘
要旨 藤原宮と本薬師寺で出土する軒平瓦6647C・Fは長らく同笵とされてきたが,筆者らの分析によって異笵であることが近年判明した。これにより3つの課題が生じたため,本論ではその解決を試みた。まず,笵傷の分析から,藤原宮6647Cの生産年代は天武朝造営期に限定され,持統朝造営期に使用された製品はストック品であることを究明した。次に,文様の様式的理解から本薬師寺6647Fは軒丸瓦6276Aa1とセットをなし,裳階用瓦との共通性と瓦笵の状態から金堂・講堂所用で686~692年頃に生産されたことを指摘した。最後に,6647Fにみられる6647Cと共通する技術について,笵傷の状態から組織間ではなく造営組織と工人個人の関係性によって生じたことを明らかにした。キーワード 6647C,6647F,藤原宮,本薬師寺,瓦生産
書評
- 溝口孝司 著『社会考古学講義―コミュニケーションを分析最小単位とする考古学の再編―』
- 松木武彦
- 長友朋子・石川日出志・深澤芳樹 編『南関東の弥生文化―東アジアとの交流と農耕化―』
- 石田智子
- 大庭重信 著『弥生・古墳時代の農耕と集団構造』
- 宮路淳子
考古フォーカス
- 奈良市 富雄丸山古墳の発掘調査
- 村瀨 陸
- モンゴル国 シャルツ・オール1遺跡
- 木山克彦・L. イッシツェレン
委員会つうしん
- 考古学研究会の財政状況について
- 全国委員会議事抄録
- 岡山例会第23回シンポジウム報告