考古学研究会
<考古学研究会事務局>
〒700-0027
岡山県岡山市北区清心町16-37長井ビル201
TEL・FAX 086-255-7840
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会誌『考古学研究』
目次
第71巻 第3号(通巻283号)
2024年12月
展望
- ICOMOS ヘリテージ・アラートを受けて―北九州市の初代門司駅遺跡をめぐって-
- 常任委員会
考古学研究会第70回総会・研究集会講演
- ウェルビーイングのための考古学
- サイモン・ケイナー,アンディ・ハッチソン
要旨 近年,ウェルビーイングの概念がイギリスの考古学的言説において重要視され るようになっている。イギリスのセインズベリー日本藝術研究所の考古学・文化遺産センターでは,考古学的フィールドワークとウェルビーイングとの関係を探るための研究 プロジェクト,「後期先史時代のノーフォーク・プロジェクト」を立ち上げた。このプロジェクトは,コロナパンデミックによって2020年から2022年まで日本での調査を行えな かったことに対応し,イギリスと日本の比較の視点がイースト・アングリア地方の考古学的遺跡の理解にどのように寄与するかを考えるきっかけとなった。その時期は別のプ ロジェクトにも取り組んでおり,結果として,ストーンヘンジ・ビジターセンターでの展示「環状列石:ストーンヘンジと日本先史時代」が開催された。このプロジェクトは, 最近ユネスコの世界遺産に登録された,縄文時代の環状列石および関連する遺跡を,年間150万人が訪れるストーンヘンジの訪問者に紹介するために企画されたものである。そ の一環として,私たちは先史時代のイギリス諸島と日本列島の遺跡の役割を考古学的視点から理解しようとするだけでなく,特にボランティア活動を通じて先史時代の遺跡に 関わることが,現代のコミュニティ形成とウェルビーイングにおいて重要なのか,いわゆるパブリック・アーケオロージーの延長線上にあるものかを理解したいと考えた。本 稿は,このプロジェクト全体に関する予備報告である。キーワード 考古学の活用,ウェルビーイング,ノーフォーク・プロジェクト,ストーンヘンジ,景観
考古学研究会第70回総会・研究集会報告(上)
- 「考古学報道」の行方―メディアの埋蔵文化財記事は社会に必要とされているのか―
- 中村俊介
要旨 考古学と報道の付き合いは他の学問分野以上に長く深く,コンテンツ上ではひ とつのテーマさえ形成してきた。しかしいま,従来のマスメディアを通した調査や研究成果の周知モデルが大きく変わろうとしている。インターネットの出現によって情報環 境は激変し,マスコミ各社の考古学報道も変質しつつある。その影響は考古学界や文化財保護行政に及び,3者が築いてきた関係性も消えようとしている。このパラダイム変 換は,人類社会の発展を支えてきた「専門知」の軽視も促し始めた。だが,「専門知」こそが新時代の人類文化の探究と歴史遺産保護への鍵となるのは疑いない。その必要性を 市民社会に正確かつ詳細に伝え続けること,そこに考古学報道の意義がある。キーワード SNS時代,記者会見,専門知,文化財保護法改正,近世・近代遺産
- 古代西アジアの二次国家形成
- 有松 唯
要旨 西アジアではメソポタミアにおける最古の国家の成り立ちが主題であったが, 古代国家形成の多くには既存の国家勢力の影響下,最古とは異なる過程があったと考えられる。そこで本稿では前1千年紀のイランでおこる二次国家の形成に着目し,当時期 に特徴的な遺構と遺物についての近年の調査研究成果をもとに,地域社会の統合形態を検討した。その結果,専制的古代国家の脅威が高まる時期には共同体間の連帯の発達が あったのに対し,脅威の低下後,中心性をもった統治構造に転換した可能性を指摘した。外的脅威という連帯を発達させていた権力基盤の喪失とともに,寡頭制に近づく中心性 をもった統治構造を,広域で構築する局面に至ったと考えた。キーワード アケメネス朝ペルシャ,アッシリア,イラン,鉄器時代,古代国家
論文
- 吉備南部地域における古墳出現期土器の生産
- 式田 洸
要旨 本論文では,製作技術から生産体制の変遷を解明するための枠組みとして,「製 作技法」「製作方法」「製作系統」の三段階を提示した。その上で,古墳出現期の畿内地域の土器生産にも影響を与えたことで知られる吉備南部地域を対象として,土器生産の 変遷過程を明らかにした。特に,古墳出現期において,特定の器種のみを製作する製作系統が出現したことに注目し,それは弥生時代後期における器種網羅的な生産から特定 器種の個別的生産への移行の帰結であると考えた。特定器種の個別的生産を中心とする土器生産体制は古墳出現期を通じて維持されるが,折衷土器の存在等から各系統の独立 性はそれほど強いわけではなかったと想定する。キーワード 古墳出現期,吉備南部地域,土器,製作技術,生産体制
研究ノート
- 倭王権中枢における円筒埴輪の割付方式と設定工具
- 村瀨 陸
要旨 古墳時代を通じて認められる円筒埴輪は,器物の通時的な製作技術の変化をと らえるうえで有効である。また,近年では特殊器台の突帯間隔設定が行われていることが明らかにされたように,それをもとに成立した円筒埴輪は,出現当初から設定工具を 用いて規格化されたことが共通認識である。一方,どういった設定工具で規格化を果たしたかの説明は十分ではない。そこで本稿では,円筒埴輪に認められる痕跡から割付方 式の再検証を行い,設定工具を想定した技術的な視点から規格化の方法について説明した。このことは,倭王権中枢における埴輪生産構造を検討していくうえでも有意義な理 論であることを展望した。キーワード 古墳時代,埴輪,倭王権,割付方式,設定工具
書評
- 忍澤成視 著『貝輪の考古学―日本列島先史時代におけるオオツタノハ製貝輪の研究―』
- 山野ケン陽次郎
新刊紹介
- 加藤一郎 著『古墳との対話―出土品からみえるこの国のなりたち―』
- 小林孝秀
- 河野一隆 著『王墓の謎』
- 野島 永
- 和田晴吾 著『古墳と埴輪』
- 東影 悠
考古フォーカス
- メキシコタバスコ州 アグアダ・フェニックス遺跡
- 猪俣 健
- 滋賀県近江八幡市 阿弥陀寺遺跡の調査
- 公益財団法人滋賀県文化財保護協会
会員つうしん